占有主体に変更があって承継された2個以上の占有が併せて主張される場合、占有者の善意無過失は、どの時点を基準に判定される?

取得時効の主張に際しては、前占有者の占有を引き継いだ者は、自らの占有と前占有者の占有とを合わせて主張することができます。

取得時効は、原則として、20年の占有が必要になりますが、善意無過失の場合には10年の占有で完成します。

通常、単独で時効取得する場合には、善意無過失か否かの判断は、占有開始時を基準に判断されることになりますが、上述のように、前占有者の占有を引き継いだ場合、どのように考えることになるか、問題になります。

判例(最判昭和53.3.6)では、このような場合には、前占有者の占有開始時に判定されるものとしています。つまり、途中で占有を引き継いだものが、引き継いだ時点で悪意(前占有者のものではないことを知っていた)としても、前占有者の占有開始時点から10年が経過すれば、善意無過失の場合の取得時効を援用して時効取得することができるのです。

したがって、占有主体に変更があって承継された2個以上の占有が併せて主張される場合、占有者の善意無過失は、最初の占有者の占有開始時に判定されます。