英文契約書における数字の表記

 今回は星の数ほどある英文契約書作成時のポイントのうち、私が法律事務所に入所して一番最初に学んだポイントについてご紹介をしたいと思います。

 契約書を作成する際、よく数字もでてくるものです。その際、数字はどのように記載すればよいのでしょうか。

 数字の記載の方法はパターンとして3つ考えられます。

 それは、(1)アラビア数字で記載する方法、(2)アルファベットで記載する方法、(3)アルファベットとアラビア数字を併記する方法です。

 実は、英文の契約書等を作成する際には、改ざん防止のため、(3)アルファベットとアラビア数字を併記する方法が主に用いられています。なお、仮にアラビア数字とアルファベットに齟齬があった場合は、一般にアルファベットが優先すると解釈されます。これはアルファベットは、アラビア数字と異なり、桁数を誤ったり、ゼロの数を改ざんされるなどの危険性が少ないためとされています(牧野和夫著『契約書が楽に読めるようになる 英文契約書の基本表現 Encyclopedia of Key Words and Expressions in English Contracts』165、166頁(日本加除出版、2014))。

 事務所に入所したての頃、簡易な契約書を作成する機会があったのですが、その際、何も知らず、私は(1)アラビア数字で記載する方法、に基づき、契約書内の数字を記載してしまい、先輩弁護士にすべて直された経験があります。直された理由を突きつめると上述のような理解にたどり着いたという次第です。

 みなさんが英文で契約書を作成する際のご参考になればと思います。

 なお、興味深いことに、この改ざん防止という点は、実は日本でも類似の思想が手形法で取り入れられています。

 手形法6条1項によると、「為替手形ノ金額ヲ文字及数字ヲ以テ記載シタル場合ニ於テ其ノ金額ニ差異アルトキハ文字ヲ以テ記載シタル金額ヲ手形金額トス」とあります。つまり、漢数字とアラビア数字を併記した際、金額に差異がある場合には、漢数字が優先してその為替手形の金額となることとなります。もちろん、この規定は約束手形にも準用されている(77条2項)ので、同様のメカニズムに基づき約束手形の金額も決定されます。

 興味がある方は、是非、この条文に関連して最高裁まで争われた手形金額重複記載事件(最判昭和61年7月10日民集40巻5号925頁)を確認していただければと思います。

参考

牧野和夫著『契約書が楽に読めるようになる 英文契約書の基本表現 Encyclopedia of Key Words and Expressions in English Contracts』165、166頁(日本加除出版、2014)。