雇用契約の終了が無効であると判断された事例(ロシア)

 今回は、以前紹介した従業員から雇用契約の終了を申し出た際のロシアにおける取扱いを規定したロシア労働法(Трудовой кодекс РФ)80条に関連する事案(АПЕЛЛЯЦИОННОЕ ОПРЕДЕЛЕНИЕ от 16 апреля 2019 г. по делу N 33-4128/2019)を紹介したいと思います。

 この事案では、従業員が雇用契約の終了を申し出た際、この申出に日付の記載がなされていない場合、雇用契約を終了させることができるのかが争点として扱われました。

 この点に関して、裁判所は「Трудовым кодексом РФ не предусмотрено самостоятельное определение работодателем даты увольнения работника по собственному желанию без согласования с работником.」と判断しました。
 つまり、ロシア労働法には、従業員が雇用契約の終了を申し出た際に、この申出に日付がない場合には、雇用主は従業員の同意なく、勝手に日付を設定することができるような規定はそもそも存在しないことを、裁判所は前提として示しました。

 そのうえで、今回の事案においては、「Также на отсутствие добровольного волеизъявления Г. на увольнение по собственному желанию указывает его обращение 06.12.2018 г. в суд с иском о признании увольнения незаконным.」として、そもそも従業員が今回の事案では、裁判所に提訴していることからも、雇用主は従業員の同意なく、勝手に雇用契約終了の日付を設定したと評価できるとして、雇用主による今回の雇用契約の終了は無効であると判断されました。

参考

http://www.consultant.ru/cons/cgi/online.cgi?req=doc&ts=1957694253003405414929557904&cacheid=3599E2E85E9271A9C16ACCD2246DBF75&mode=splus&base=SOPV&n=399559&rnd=0.07128452891257186#1741z357ts7