ロシアにおける従業員の解雇

 以前は、ロシアにおける従業員からの雇用契約の終了について紹介をしました。そこで、今回は、従業員側からではなく、雇用主側から雇用契約を終了した場合について紹介をしたいと思います。

 ロシア労働法(Трудовой кодекс РФ)81条各号には、労働契約が雇用主により終了される場合の終了事由について列挙されています。その中でも、今回は、特に同条5号についてまずは検討をしたいと思います。

 81条5号によると、「неоднократного неисполнения работником без уважительных причин трудовых обязанностей, если он имеет дисциплинарное взыскание」と規定されており、正当な理由なく、従業員が債務不履行を繰り返し、懲戒処分を受けた場合には、雇用主により労働契約を終了することが可能であることが規定されています。なお、この場合、あくまで懲戒処分は複数回(2回以上)行われる必要がある点がポイントとなります。

 では、違反行為が複数回あったにもかかわらず、それらの違反行為がまとめて一つの懲戒処分の対象となったときはどうなのでしょうか。このような場合にも、懲戒処分が複数回あると観念して、雇用主により労働契約を終了させることはできるのでしょうか。

 この点に関して、事案(определение вс рф от 08.04.2019 n 18-кг18-270)があり、この事案によると、「что к работнику ранее было применено дисциплинарное взыскание и на момент повторного неисполнения им без уважительных причин трудовых обязанностей оно не снято и не погашено.」との判断が示されています。
 つまり、雇用主により労働契約を終了させるためには、終了させようとする時点以前に懲戒処分がなされたうえで、正当な理由なく従業員により繰り返し債務不履行がなされることが必要であるとこの事案では示されました。そのうえで、以前に懲戒処分がなされたとしても、その懲戒処分が撤回されたり、あるいは既に処分がなされてから1年間を経過してしまっている場合には、この懲戒処分は81条5号でカウントされる懲戒処分に含まれないということになります。
 したがって、この事案に依拠する限りでは、違反行為が複数回あったにもかかわらず、それらの違反行為がまとめて一つの懲戒処分の対象となったときには、その懲戒処分のみをもって労働契約を終了させることはできず、あくまでまとめて一つの懲戒処分がなされた後に、再び従業員による債務不履行があって初めて労働契約を終了させることができるということになります。

参考

http://www.consultant.ru/document/cons_doc_LAW_34683/6a7ba42d8fda3a1ba186a9eb5c806921998ae7d1/

http://www.v2b.ru/documents/opredelenie-verhovnogo-suda-rf-ot-08-04-2019-18-kg18-270/