年休の繰越し
年休の繰越しに関して、ロシア労働法124条によると、使い切らなかった年休は次の年に繰り越すことも可能です。もっとも、2年連続で年休を繰り越すことは労働・社会保護省(Федеральная служба по труду и занятости)が出した文書(Письмо)により、禁止されています。そのうえで、気を付けなければいけない点としては、一定の職種に関しては、年休を繰り越すことができない例外もあるということです。
年次有給休暇を取得させない場合の罰則
また、労働者に年休を取得させないことは、行政罰の対象となる可能性があるので注意が必要です。具体的には、行政違反に関する法律(Кодекс Российской Федерации об административных правонарушениях (КоАП))5.27条によると以下のような内容の行政罰が規定されています。
1回目の違反は、注意勧告あるい過料(административный штраф)の対象となります。過料は、役人であれば1,000~5,000ルーブル、法人格のない個人であれば1,000~5,000ルーブル、法人であれば30,000~50,000ルーブルと規定されています。
また、2回目以降の違反は、役人であれば10,000~20,000ルーブル(あるいは、業務停止1年~3年)、法人格のない個人であれば10,000~20,000ルーブル、法人であれば50,000~70,000ルーブルと規定されています。
つまり、1回目の違反よりも2回目の違反の方が重いものと規定されています。
今回、日本においては2019年4月1日改正によって、年休取得が罰則の導入により義務化されましたが、実はロシアにおいてはすでに年休取得の義務化が行政罰という形式で導入されていたと分析できます。
有給を取りたがらない者への対応
では、もし有給をとりたがらない労働者がいるとき、使用者はどうすればよいのでしょうか。
ロシアにおいては、上述したとおり、使い切らなかった年休は次の年に繰り越すことも可能です。もっとも、繰り越す際には、後で使用者が労働者の年休取得を妨げたということが争われないように、あくまで労働者が作成した書面で有給を来年に持ちこす形をとることが重要となってきます。そして、たとえ労働者が作成した書面での有給の繰り越しであっても、2年連続で持ちこすことはできないので注意が必要です。