近年、ロシアでの飲酒量は減少傾向にありますが、それでも飲酒に関連する問題は絶えません。今回は、飲酒を理由として解雇された運転手の事案(Апелляционное определение Московского городского суда от12.03.2019 N33-5904/2019)を紹介したいと思います。
事案の概要
ある男性は運転手として働いていたところ、出勤前に行う呼気検査で、1回目にアルコール反応が0.17mg/Lとして出ました。ノルマが0.16mg/Lだったこともあり、男性はノルマを超える数値であるとして、運転をすることができない状況と判断されました。
1回目の呼気検査を終えて20分後、2回目の検査をしたところ、次の数値は0.10mg/Lで、ノルマを下回る数値がでました。
もっとも、男性は1回目の呼気検査で引っかかったことから、解雇をされてしまいました。解雇に納得がいかなかった男性は再び自腹で3回目の呼気検査をしましたが、その際もノルマを下回る数値がでました。そこで、男性は裁判所でかかる解雇は不適法だと争いました。
裁判所の判断
裁判所は、男性の請求を認容し、(1)解雇中の給料の支払い、(2)3回目の呼気検査の代金の支払い、(3)慰謝料の支払いを会社に命じました。ポイントとなったのは、厚生省(Министерство здравоохранения)が出している命令1号(現行では3項12号)でした。かかる命令には、呼気検査で2回連続で引っかかた者の解雇を認める旨の記載があり、男性は1回のみしか引っかかっていないため、解雇が無効であると判断されたのです。
ポイント
ロシアで従業員を解雇ができるのは日本と同様、限定的な場合に限られます。そして、解雇できるかを判断する際には社内の基準だけでなく、政府が定めている命令等にも目を向ける必要があるので、ロシアでビジネスを展開する際には気を付けましょう。