今回は現行犯逮捕について、日本とロシアの制度の違いを紹介したいと思います。
日本の現行犯逮捕
日本においては、刑事訴訟法213条により、「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。」とあり、刑事訴訟法212条1項において「現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。」と規定されています。
そのうえで、準現行犯逮捕として、刑事訴訟法212条2項により「左の各号の一にあたる者が、罪を行い終わつてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。」とあり、「左の各号」として、以下のような規定がなされています。
1号 犯人として追呼されているとき
2号 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているときとき
3号 身体又は被覆に犯罪の顕著な証拠があるとき
4号 誰何されて逃走しようとするとき
ロシアの現行犯逮捕
これに対し、ロシアにおいては、現行犯逮捕について、ロシアの刑事訴訟法(Уголовно-процессуальный кодекс Российской Федерации” от 18.12.2001 N 174-ФЗ (ред. от 18.02.2020))91条に規定されています。
まず、ポイントとなるのは、現行犯逮捕の対象となるのは、懲役刑の対象となる犯罪に限られるということです。
そのうえで、91条1項には1~3号として具体的にいかなる場合に現行犯逮捕ができるのかが規定されています。以下のいずれか1つにでも該当すれば、現行犯逮捕することが可能です。
1号 被疑者が犯罪実行の際、またはその直後に拘束されたとき
2号 被疑者または目撃者が、被疑者が犯罪を実行したと指摘したとき
3号 被疑者の身体、衣服または住居に犯罪の明らかな痕跡が発見されたとき
なお、1~3号該当事由が存在しない場合であっても、当人の犯行を疑う根拠となるその他の事情が存在する場合においても91条2項に基づき逮捕は可能ですが、その場合はより要件が加重されています。具体的には、当人の犯行を疑う根拠となるその他の事情が存在することに加え、①当人の逃亡の試み、②住居不定、③身元不明、④取調機関の長の同意を得た取調官あるいは検察官の同意を得た捜査官により当人に対する身柄拘束に関する請求が裁判所に送付されたとき、といった追加の要件をいずれか1つは充足する必要があります。