日本において広告規制というものが存在するのと同様、ロシアにおいても広告規制というものが存在します。
2020年2月下旬と非常に最近のことですが、Googleが行っていた広告に関し、ロシアにおいて課徴金が課されようとしていることが発表されました。問題となっているのは、«AB INNOVATIONS LTD»という会社に関する広告です。どうしてGoogleは課徴金の対象となるのでしょうか。
今回は、ロシアの広告規制に関する法律を紹介しながら、説明をしてみたいと思います。
ロシアにおける法規制
ロシアには広告に関する法律(Закона о рекламе)が存在し、第1節5条によると、広告は「公正かつ信頼できるもの」であることが求められています。そのうえで、第7条7項においては、商品の製造や販売に関してライセンスや特別な許可が必要となる商品に関しては、ライセンスや特別な許可が得られていない場合は広告をすることが禁止されています。
ライセンスや特別な許可を得ていない商品を広告してしまうと、ロシア連邦反独占局Федеральная антимонопольная служба(ФАС)により、法人であれば、100,000~500,000ルーブル(約15万~75万円)の課徴金が課される可能性があります。そして、ポイントとして、この課徴金の対象となるのは、あくまで広告をした主体であり、そのような商品を製造・販売している主体ではないということです。
もちろん、行政違反に関する法律(Кодекс Российской Федерации об административных правонарушениях (КоАП))2.1条に基づき、広告をした主体は、商品を製造・販売している主体がライセンスや特別な許可を得ていないことを知らなかった場合には、課徴金の対象とはならないと規定されています。もっとも、基本的に、広告をする主体は、商品を製造・販売している主体に対して、ライセンスや特別な許可を受けているかを確認する権利が明文化されている以上、確認を怠った過失はどうしても基礎づけられてしまうため、実質的には知らなくても課徴金の対象となるような扱いがされています。
過去の事例
過去においても、2016年に、有限責任会社Mail.ru(ООО «Мэйл.Ру»)がライセンスを有しない貸金業者の広告を発信したことにより課徴金が課せられた事案が存在します(ПОСТАНОВЛЕНИЕ Арбитражного суда Московского округа от 24.10.2016 № Ф05-15050/2016)。
ポイント
今回のGoogleも適切なライセンスを有しない金融業者を広告してしまったとして課徴金を課すプロセスに入ったということです。
実際に«AB INNOVATIONS LTD»を検索すると、650ルーブル(約100万円)をこの会社に預けると1日あたり1.9%の利率(1年換算すると、なんと600%近くの利率)で利益が得られるというような事業を行っている会社であり、典型的なポンジ・スキームの会社であると思われます。
ロシアで広告を行う際には、くれぐれも気を付けましょう。
傍論:課徴金の上限額が低すぎる?
上述のとおり、広告規制に関する課徴金の上限は500,000ルーブル(約75万円)です。
個人情報保護関連で数千億円の課徴金が課されてもその有効性に疑義があるGoogleのような大企業にとって、75万円の課徴金がどれほどの意味を持つのでしょうか。
課徴金の上限額が低すぎるという批判はロシア国内でも多く、今後、改正されることになるかもしれません。