ロシアでは、採用拒否の際に理由を通知しなければならない

就職活動において、不採用だったときに、どうして拒否されたのか、その理由を知りたいと思うことはありますよね。もっとも、実際にその理由を採用拒否をした会社に聞くかは別の話かもしれませんが、ロシアで採用拒否の理由を知ろうとして裁判まで起こした人がいたので、今日はその事案について説明をしたいと思います。

事案の概要

具体的な事案の概要は以下のようになっています。
ある男性は、インターネットで会計士の求人をしている会社を求人サイトで見つけ、募集をしたところ、採用を拒否されました。これに対し、男性は自分が採用を拒否されたことに納得がいかず、会社に対して、どうして採用拒否されたのか説明を求める手紙を送りました。もっとも、この手紙は、会社が受け取りを拒否したのか、郵便局に保管期間まで保管され、保管期限が切れると、男性の手元に戻ってきました。そこで、男性はそもそも自分は採用されるべき人材であったとして裁判所に、採用拒否が不適法なものであり、
(1)会社に対して採用されたこと前提とする地位確認
(2)拒否された段階から未払いとなっている給料の支払い
(3)慰謝料の支払いを求め、提訴しました。

裁判所の判断

裁判所はこの請求を棄却しました。
裁判所によると、求人インターネットで仕事の応募をした者は、拒否されたとしても、拒否された理由を書面で求める権利はないと判断されました。拒否された理由を聞く権利が発生するのは、あくまで会社に直接就職の応募をしたときに限られ、今回の男性のように、あくまで求人インターネット経由で応募をしたものは、会社に直接就職の応募をしたことと同視することはできない以上、今回の男性は拒否された理由を聞く権利はないとされました。

ロシアにおける労働法の規律

採用拒否された理由をそもそも聞く権利自体あるのか、少し違和感を覚える人もいるかもしれませんが、実は、日本とは異なり、ロシアでは採用拒否された場合、会社に対して、ロシアの労働法(Трудовой Кодекс РФ)64条に基づき、その理由の開示を求めることができ、開示を求められた会社は7日以内にその理由を開示しなければなりません。これはロシアの労働法では一定の人に対して(例えば、妊娠中の女性、一定の人種等)その属性を理由に採用拒否を禁止していることもあり、不法な採用拒否を防止するという観点から会社は採用拒否の理由の開示が求められた場合には、労働法の条文とともに理由の開示をしなければならないこととされています。なお、不当な採用拒否をした場合には、罰金あるいは最長で3年の営業停止がなされる可能性があります。

もし、ロシアで子会社等を持ち事業を展開していく際に、現地で人を雇い入れる中で採用拒否をする場合には適切な対応が求められるので注意が必要です。

参考

ТОП-10 самых интересных трудовых споров
Занимательные дела по не самым распространенным, но весьма любопытным вопросам, столкнуться с которыми может каждый.
https://www.zakonrf.info/tk/64/