まだCOVID-19の影響が世界規模で見受けられる状況が続いています。そんな中、外出自粛等が行われたりすることで、契約の履行が困難となったとして、契約内容の変更あるいは契約の解除ということはできるのでしょうか。
日本には、事情変更の原則というものが存在し、契約締結時に前提とされた事情がその後大きく変化し、当初の契約どおりに履行させることが当事者間の公平に反する結果となる場合に契約の改定や解除を認められますが、COVID-19の場合にこの法理の適用があるかに関する裁判例や政府見解は見当たりません。
では、ロシアではどうなのでしょうか。日本のように、事情変更の原則は存在するのでしょうか。また、存在するとして、COVID-19の影響に事情変更の原則は適用されるのでしょうか。
まず、ロシアにおいては、事情変更の原則が存在するにとどまらず、この法理はロシア民法(Гражданский кодекс РФ)451条に明文化されています。
具体的には、同条2項に、「Если стороны не достигли соглашения о приведении договора в соответствие с существенно изменившимися обстоятельствами или о его расторжении, договор может быть расторгнут, а по основаниям, предусмотренным пунктом 4 настоящей статьи, изменен судом по требованию заинтересованной стороны при наличии одновременно следующих условий」と規定されています。
つまり、大幅な事情変更がある場合、契約の変更・解除に関して当事者が合意に達することができないとき、当事者は裁判を通じて、契約を解除することができます。また、同条項に示された4つの各号の要件を全て充足する際には、裁判を通じて、契約内容を変更することもできます。
では、契約内容を変更するために充足すべき4つ要件は何なのでしょうか。
まず、同条項1号には、「в момент заключения договора стороны исходили из того, что такого изменения обстоятельств не произойдет」と規定されています。
つまり、1つ目の要件として、契約締結当時、当事者が当該事情変更が生じないことを想定していたことが挙げられています。
また、同条項2号には、「изменение обстоятельств вызвано причинами, которые заинтересованная сторона не могла преодолеть после их возникновения при той степени заботливости и осмотрительности, какая от нее требовалась по характеру договора и условиям оборота」と規定されています。
つまり、2つ目の要件として、契約の性質や条件に照らし、当事者が善管注意義務を払ったにもかかわらず、当事者に帰責事由がなく、事情の変更が発生してしまったことが挙げられます。
さらに、同条項3号には、「исполнение договора без изменения его условий настолько нарушило бы соответствующее договору соотношение имущественных интересов сторон и повлекло бы для заинтересованной стороны такой ущерб, что она в значительной степени лишилась бы того, на что была вправе рассчитывать при заключении договора」と規定されています。
つまり、3つ目の要件として、契約の条件を変更することなく、契約の履行を継続させてしまっては、当事者が契約を締結した際に見込んだ利益を獲得することができず、重大な損害を被ってしまうことが挙げられています。
そのうえ、同条項4号には、「из обычаев или существа договора не вытекает, что риск изменения обстоятельств несет заинтересованная сторона」と規定されています。
つまり、4つ目の要件として、契約の当事者が事情変更から生じるリスクを負うことが契約の慣習または実体にそぐわないことが挙げられています。
では、同条に規定された事情変更の原則は、COVID-19の影響についても適用があるのでしょうか。
この点に関して、ロシアの法律関連サイト(https://pravo.ru/)においては、「適用がある」という見解が示されています。もっとも、それもロシア政府の公式見解としてはっきり示された訳ではないことに留意が必要です。
参考
https://pravo.ru/story/220859/
http://www.consultant.ru/document/cons_doc_LAW_5142/60585aaf3ec9b9a385118b4dbdb6f45bf26fd524/