事案の概要
まず、事案の概要を説明します。インターネットにおける販売サイトpilki.ruは2005年以来、マニキュア製品を販売していました。そんな中、 2012年になって、突然、別の会社が販売サイトpilkishop.ruをオープンし、2016年に«ПИLКИ ШОП»(PILKI SHOP)を商標登録しました。 そして、さらに2年が経った頃、PILKI SHOP商標の所有者がpilki.ruというドメインが自身の運営するpilkishop.ruというドメインに非常に似ていると思い、pilki.ruのドメインを自身のものにしようとして、裁判所に提訴しました。
裁判所の判断
第一審と控訴審において、請求は棄却されました。
もっとも、これに対して、破毀審は、これらの判断が間違っていたとして、破毀差戻しを行いました。
破毀審が強調した点は、商標権の有無というところです。たしかに、ドメインは商標権の独占権の対象に含まれますが、あくまで「商標権」の独占権の一内容にドメイン保護が位置づけられるにすぎないので、ドメインの使用開始にかかわらず、商標権の登録をして初めてドメインが保護の対象となるとの判断がなされました。
判決の抜粋
以下、この点を示した破毀審の判断部分を抜粋します。
「В соответствии с пунктом 3 статьи 1484 ГК РФ никто не вправе использовать без разрешения правообладателя сходные с его товарным знаком обозначения в отношении товаров (услуг), для индивидуализации которых товарный знак зарегистрирован, или однородных товаров (услуг), если в результате такого использования возникнет вероятность смешения. При этом использование таких обозначений в сети «Интернет», в том числе в доменном имени и при других способах адресации, входит в объем исключительного права на товарный знак. 」
つまり、ロシア民法1484条3項に従い、商品やサービスと関連して商標権を登録している者の同意がない限り、その者の商標あるいはその商標類似の商標を別の者が自己の商品やサービスに用いることはできない、と破毀審は判断したうえで、ドメインやその他のアドレスの指定方法も商標権の独占権の対象に含まれる、と判断しました。
「…суд апелляционной инстанции не учел, что данные разъяснения во взаимосвязи с пунктом 3 статьи 1484 ГК РФ свидетельствуют о возможности защиты исключительного права на товарный знак безотносительно даты регистрации доменного имени. 」
つまり、控訴審はドメインの登録日に着目した判断をしましたが、破毀審は、控訴審のこの判断は不適切で、ロシア民法1484条3項と関連して、商標権の独占権保護の可能性のあるドメインを勘案する際には、ドメインの登録日に着目する必要はない、と判断したのです。