会社に出資をして配当金を得るという投資形態は様々な国で行われており、ロシアでもこのような投資形態は、日本と同様に存在します。もっとも、具体的にどのような流れで出資をしていくのかという点では相違もあるので、今回は、ロシアで株式取得をする際の手続を日本との違いにも言及しながら、説明したいと思います。
法律の根拠
まず、条文ですが、発行された株式を取得することにより、資本金の額が増えるような投資については、有限責任会社法Закон об ООО (общества с ограниченной ответственностью)19条に規定されています。
株式取得の手続き
では、具体的に株式を取得する際には、どのような流れで取得することができるのでしょうか。
ロシアで株式の申込みをするときには、会社の株主になりたいことを表明したうえで、いくら出資したいのか、また何パーセントの持分を取得したいのかを会社に伝える必要があります。金銭のみの出資ではなく、現物出資もロシアでは日本同様、可能です。
そして、申込みを受けると株主総会が開催され、株主として受け入れるかが決定されます。この株主総会において、総株主の同意で株主として受け入れるかの決定後、いつまで出資する必要、会社で占める持分比率、またその額等が決定されます。そして、資本金の額が変わるので、会社としては、定款を変更する必要が生じ、変更された定款は公証人の認証が必要となります。日本では、会社の新規設立の際にのみ、定款の認証が必要となるので、この点で日本とロシアは異なるといえます。
そのうえで、資本金の額が変わるという点で、法人登記簿(ЕГРЮЛ)の変更を経たうえで、税務署に必要書類の提出もする必要があります。
株式取得による変化
では、投資をすると、他の株主の持株比率はどのようになるのでしょうか。
素朴に考えると、投資の額が大きくなればなるほど、他の株主の会社の持株比率はどんどん低下すると思われるかもしれませんが、この持株比率の低下に制限をかけることができるので、投資した分だけ必然的に持株比率が変わるというわけではありません。どれだけ持株比率を低下させることができるかという点は、定款に記載がされており、このような定款の運用により、既存株主の保護が図られているのです。
ロシアには「有利発行」がない
そのうえで、ロシアでは“有利発行”というものが存在しないことが日本との大きな違いとなっています!
例えば、100万円の資本金が現在ある会社で20%の持株比率を取得したい場合、25万円の出資をすると、125万円の資本金となり、結果として20%の持株比率を取得することになります。もっとも、会社に20%の持株比率を取得したいですと伝える際、投資家は、本来25万円で取得できる部分を、例えば30万円で取得したいですと割高で申込み、株主総会で可決されやすいような値段設定をするのは自由です。その場合には、30万円でこの20%部分を取得することになります。これに対し、投資家が同じ20%を20万円で取得したいと申込みができるか、つまり、有利発行の申込みができるかという点については、明文でできないと規定されているのです。そのため、この例で20%の持分比率を取得したい場合には25万円以上の出資を株主は覚悟する必要があるのです。
ポイント
ロシアでは、日本以上に既存株主の保護に焦点をあてた制度が構築されていると評価できます。しかし、それは同時に、有利発行によって会社再建をするという手段が取れないということを意味します