雇用契約終了と損害賠償

 雇用契約が終了する際、様々なことが問題となります。そこで、今回は、ロシアにおける雇用契約の終了と関連して損害賠償が問題となった事案(ВЕРХОВНЫЙ СУД РОССИЙСКОЙ ФЕДЕРАЦИИ Дело № 4-В09-54 ОПРЕДЕЛЕНИЕ г. Москва 18 февраля 2010 года)を紹介したいと思います。

事案の概要

 この事案は、バレーボールセンターが雇い入れた女性コーチに対して雇用契約終了を原因として損害賠償請求をした事案です。
 問題となった雇用契約は2008年5月16日にバレーボールセンターと女性コーチとの間で締結され、その契約期間は、2008年7月1日~2010年6月30日となっていました。
 今回の事案の発端となったのは、女性コーチは契約締結後、実際の就業日になっても、職場に現れなかった点にあります。そして、ロシア労働法(Трудовой кодекс Российской Федерации)81条6項(a)によると、正当な理由なく4時間連続で会社に無断で、出勤しない場合は、解雇事由にあたることが規定されています。
 そこで、バレーボールセンターは女性コーチを同条項に基づき解雇しました。
 そのうえで、雇用契約書には、使用者が労働者を懲戒事由で解雇し、雇用契約を終了する際には、労働者が使用者に対して1年分の給料を支払うことに加え、さらにその給料の1.5倍を上乗せする形で賠償金を支払うことが規定されていました。つまり、今回の女性トレーナーに対して、バレーボールセンター側は「1年分の給料」×2.5倍の額を損害賠償として要求したのです。
 これに対して、女性は雇用契約を締結する際、締結をした使用者側の人に契約締結権限がなかったことなど、雇用契約の不備を指摘し、そもそも契約は締結されていないことなどを主張し、争いました。

裁判所の判断

 裁判所においては、以下のような判断がなされました。
 原審は、女性コーチ側が敗訴したのに対し、最高裁では女性コーチが逆転勝訴しました。
 最高裁は、ロシア憲法(Конституция Российской Федерации)37条には職業選択の事由が規定されていることを示したうえで、ロシア労働法61条を引用し、労働者が就業日に就業をしない場合、使用者は雇用契約を解除し、雇用契約を遡及的に無効とする権利を有することに言及しました。そのうえで、今回の事案では、女性は就業日にそもそも現れていないので、懲戒事由により契約が終了したわけではなく、あくまでロシア労働法61条により契約が解除され、労働契約が遡及的に無効となったにすぎないため、雇用契約内に締結されていた労働者の賠償規定が本問では適用されないことを示したのです。

参考

!http://www.trudovoikodeks.ru/praktika/praktika_iniz_rd_6_81_a_resh82.shtml

!http://www.consultant.ru/document/cons_doc_LAW_34683/6a7ba42d8fda3a1ba186a9eb5c806921998ae7d1/

!http://www.consultant.ru/document/cons_doc_LAW_28399/5e37b9644c66582efdaf762a109a281bf999c28d/

!http://www.consultant.ru/document/cons_doc_LAW_34683/e0ba21b776b7d276794160fd443d84805181095b/