制限行為能力者
・成年被後見人がした売買契約は、成年後見人の同意を得てした場合であっても、その契約が日常生活に関するものであるときを除き、取り消すことができる。(9条)
・被保佐人がした保証契約は、保佐人の同意を得てした場合には、取り消すことができない。(13条)
・被補助人が、補助人の同意を得なければならない行為を、その同意またはこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでしたときは、その行為は取り消すことができる。(17条)
・親権者の同意を得ずに未成年者がした売買契約は、その契約が日常生活に関するものであっても、取り消すことができる。(5条)
・成年被後見人の行為であることを理由とする取消権の消滅時効の起算点は、成年被後見人が行為能力者となった後、取消権を有することを知った時である。(124条、126条)
不在者の財産管理人
・不在者が土地を所有している場合、財産管理人が不在者を代理して土地を第三者に売却するためには、家庭裁判所の許可を得る必要がある。(28条、103条)
・不在者が所有する現金が発見された場合、財産管理人が不在者を代理してその現金を銀行の不在者名義普通預金口座に預け入れるためには、家庭裁判所の許可を得る必要はない。(28条、103条)
・不在者が第三者に対して借入金債務を負っており、その債務が弁済期にある場合、財産管理人が不在者のために第三者に対しその債務の弁済をするためには、家庭裁判所の許可を得る必要はない。(28条、103条)
・不在者が被相続人の共同相続人の一人である場合、財産管理人が不在者を代理して被相続人の他の共同相続人との間で被相続人の遺産について協議による遺産分割をするためには、家庭裁判所の許可を得る必要がある。(28条、103条)
・不在者に子がいる場合、財産管理人が不在者を代理して子に対し結婚資金を贈与するためには、家庭裁判所の許可を得る必要がある。(28条、103条)
代理
・あらかじめ許諾を得た場合、双方を代理して契約を締結することができる。(108条)
・法定代理人がやむを得ない事由があるために復代理人を選任した場合、代理人は、本人に対して復代理人の選任及び監督についての責任のみを負う。(105条)
・代理人がその代理権の範囲内で本人のためにすることを示さずに相手方と契約を締結した場合、相手方において、代理人が本人のために契約を締結することを知っていなくても、知ることができた場合であれば、相手方と本人との間に契約の効力が生じる。(100条但書)
・委任による代理人が本人の指名に従って復代理人を選任した場合、代理人は、選任時に復代理人が不適任であることを知っていたとしても、本人に対して復代理人の選任についての責任を負うことがある。
・無権代理人は、本人の追認を得られなかった場合、自己に代理権があると過失なく信じて行為をしたときでも、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。(117条)
条件
・条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。(129条)
・条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。(130条)
・停止条件付法律行為は、当事者が条件を成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。(127条)
・不能の解除条件を付した法律行為は、無条件となる。(133条)
・停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効となる。(134条)
取得時効
・時効期間中に建物が第三者の不法行為により一部損傷した場合の損害賠償請求権は、その建物の所有権を時効により取得した者に帰属する。
・被相続人の占有により不動産の取得時効が完成した場合、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ取得時効を援用することができる。
・占有主体に変更があって承継された2個以上の占有が併せて主張される場合、占有者の善意無過失は、最初の占有者の占有開始時に判定される。
・不動産の所有権を時効により取得した者は、時効完成後にその不動産を譲り受けた者に対し、陶器がない限りその所有権の取得を対抗することができない。
・自己の所有物を占有する者は、その物について取得時効を援用することができる。
不動産物権変動
・AがA所有の甲建物をBに売却し、さらにBがこれをCに売却した場合、Cは、Aに対し、登記をしなくても売買による甲建物の所有権の取得を対抗することができる。
・甲土地を所有するAが遺言をしないで死亡し、二人の子BCのうちBが相続放棄をしてCが唯一の相続人となった場合において、Bの債権者Dが高土地についてBも共同相続したものとしてBのその持分を差し押さえ、その旨の登記がされたときは、Cは、Dに対し、登記をしなくても単独相続による甲土地の所有権の取得を対抗することができる。
・A所有の甲土地をAからBが買い受けた後、Bの代金未払を理由にAB間の売買契約が解除された場合において、その後にBがCに甲土地を売却しその旨の登記がされたときは、Aは、Cに対し、解除による甲土地の所有権の復帰を対抗することができない。
・A所有の甲土地についてBがAから遺贈を受けた場合において、Aの共同相続人の1人であるCの債権者Dが甲土地についてCが共同相続したものとしてCのその持分を差し押さえ、その旨の登記がされたときは、Bは、Dに対し、登記をしなければ遺贈による高土地の単独所有権の取得を対抗することができない。
・Aが新築して所有する未登記の甲建物をBが不法に占有している場合、Aは、Bに対し、登記をしなくても甲建物の所有権の取得を対抗することができる。
即時取得
・Bは、甲をEに贈与し、Eは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、現実の引き渡しを受けた。甲が宝石であった場合、Eは、即時取得により甲の所有権を取得する。
・Bの債権者により甲が強制競売に付され、Fは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、甲を競落し、現実の引渡しを受けた。甲が宝石であった場合、Fは、即時取得により甲の所有権を取得する。
・Bは、甲をGに質入れし、Gは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。甲が宝石であった場合、Gは、即時取得により甲を目的とする質権を取得する。
・Bは、甲をCに売却し、Cは、甲がBの所有物であると過失なく信じて、現実の引渡しを受けた。甲が道路運送車両法による登録を抹消された自動車であった場合、Cは、即時取得により甲の所有権を取得することができる。
・Bが死亡し、その唯一の相続人Dは、甲がBの相続財産に属すると過失なく信じて、現実に占有を開始した。甲が宝石であった場合でも、Dは、即時取得により甲の所有権を取得しない。
所有権
・土地の使用収益の権原なく播種された種子が稲に生育した場合、その苗の所有権は、播種した者ではなく、その土地の所有者が取得する。
・加工者が他人の木材のみを材料としてこれに工作を加えた場合において、その工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。
・立木の所有権に関する明認方法は、現所有者名を表示すれば足り、所有権の取得原因、前所有者名を表示することは必要ない。
・甲土地とその上の立木を所有するAが立木の所有権を留保して高土地をBに譲渡したあと、BがCに甲土地を立木とともに譲渡した場合、Aは、立木の所有権の留保について登記や明認方法を備えなければ、立木の所有権をCに主張することができない。
・甲土地とその上の立木を所有するAがBに甲土地を立木とともに譲渡し、甲土地についてAからBへの所有権移転登記がされた後、CがAから立木のみを譲り受け、立木について明認方法を備えた場合、Cは立木の所有権をBに主張することができない。
相隣関係
・土地の所有者は、隣地の所有者が隣地に設置した排水口の破壊又は閉塞により自己の土地に損害が及んでいる場合、隣地の所有者に、排水口の修繕又は障害の除去をさせることができる
・境界線上に設けられた境界標は、相隣者の共有に属するものと推定される
・土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる
・AとBが共有する土地の分割によって公道に通じないA所有の甲土地と公道に通じるB所有の乙土地が生じた場合において、甲土地から公道に至るためにはC所有の丙土地を通行するのが最も損害が少ないときでも、Aは、丙土地を通行することができない
・土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を超えているときでも、自らその枝を切除することができない。
共有(A,B及びCが3分の1の割合で甲建物を共有している場合)
・DがA,B及びCに無断でD名義の所有権移転登記をした場合、Aは、B及びCの同意を得ることなく単独で、Dに対してその所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができる
・AがBに対して甲建物の管理に関する債権を有する場合において、Bがその持分をFに譲渡したときは、Aは、Fに対してもその債権を行使することができる
・Aは、その持分に抵当権を設定する場合、B及びCの同意を得る必要はない
・Aは、その持分を放棄する場合、B又はCの同意を得る必要はない
・AがB及びCに無断で甲建物をEに引き渡し、無償で使用させている場合、Bは、Cの同意を得ることなく単独で、Eに対して甲建物の明け渡しを請求することができない
不動産を目的とする担保物件
・不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない
・不動産質権の設定後に質権者が質権設定者に目的不動産を占有させたとしても、質権の効力は影響を受けない
・不動産質権者は、設定行為に定めがあるときは、その債権の利息を請求することができる
・留置権者は、債務者の承諾を得なければ、目的不動産を賃貸することができない
・抵当権の存続期間は、10年を超えることができる
留置権
・留置権者が目的物を紛失したときは、留置権は消滅する。
・債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる
・他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権が弁済期にないときは、その物を留置することができない
・留置権者は、留置権に基づき、目的物の競売を申し立てることができる。
・Aがその所有する甲建物をBに売却して引き渡した後、Aが甲建物をCに売却してその旨の登記をした場合において、CがBに対して甲建物の明渡請求をしたときは、Bは、Aの債務不履行に基づく損害賠償請求権を被担保債権として、甲建物を留置することができない。
質権
・動産質兼者は、質物から生ずる果実を収取し、他の債権者に優先して被担保債権の弁済に充当することができる
・Aは、Bに対して有する債権を担保するために、BがAに対して有する債権を目的として質権の設定を受けることができる
・債権質の質権者は、質権の目的が金銭債権でない場合でも、これを直接に取り立てることができる
・質権者は、質権設定者の承諾を得なくても、自己の債務の担保として質物をさらに質入れすることができる
・質権は、設定行為に別段の定めがあるときを除き、質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。
抵当権
・抵当権者は、目的物が第三者の行為により滅失した場合、物上代位により、所有者がその第三者に対して有する損害賠償請求権から優先弁済を受けることができる
・一人の者が所有する互いに主従の関係にない甲乙2棟の建物が工事により1棟の丙建物となった場合において、甲建物と乙建物とにそれぞれ抵当権が設定されていたときは、それらの抵当権は、丙建物のうちの甲建物と乙建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続する
・後日発生すべき貸付金債権を担保するために抵当権を設定する契約がされ、その旨の登記がされた後にその貸付金債権が生じた場合、抵当権はその債権を有効に担保する
・借地上の建物について抵当権が設定された場合、抵当権の効力は、敷地の賃借権に及ぶ
・物の引渡請求権を担保するために抵当権を設定する契約は、有効である
抵当権の効力が及ぶ範囲
・土地の所有者が、土地に抵当権を設定した後、その土地上に立木を植栽した場合、抵当権の効力は、その立木に及ぶ
・抵当権設定者から抵当権の目的である建物を賃借した賃借人が、その所有する取り外し可能なエアコンを建物内に設置している場合、抵当権の効力は、そのエアコンに及ばない
・抵当権設定者が、抵当権の目的である土地を第三者に賃貸していた場合、その担保する債権について不履行がなければ、抵当権の効力は、その賃料債権に及ばない
・抵当権設定者が、抵当権の目的である建物に宝石を持ち込んで保管していた場合、抵当権の効力は、その宝石に及ばない
・抵当権の目的である建物が天災のため崩壊し動産となった場合、抵当権の効力は、その動産に及ばない
譲渡担保
・債務者が弁済期に債務の弁済をしなかった場合において、不動産の譲渡担保権者が目的不動産を譲渡したときは、譲受人がいわゆる配信的悪意者に当たるときであっても、債務者は、残債務を弁済して目的不動産を受け戻すことができない
・譲渡担保の被担保債権の弁済期後に目的不動産が譲渡担保権者の債権者によって差し押さえられ、その旨の登記がされた場合、債務者は、その後に被担保債権に係る債務の全額を弁済しても、差押債権者に対し、目的不動産の所有権を主張することができない。
・構成部分の変動する集合動産であっても、その種類、所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法によって目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができる
・債務者は、被担保債権の弁済期後は、譲渡担保の目的物の受戻権を放棄しても、譲渡担保権者に対し清算金の支払いを請求することができない
・債務者が弁済期に債務の弁済をしなかった場合において、不動産の譲渡担保権者が目的不動産を譲渡したときは、債務者は、譲受人からの明渡請求に対し、譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができる
保証
・保証契約は、書面又はその内容を記録した電磁的記録によってされなければ、その効力を生じない
・保証人が催告の抗弁権を行使したにもかかわらず、債権者が催告を怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる
・保証人は、債権者が保証人を指名した場合には、行為能力者であることを要しない
・個人貸金等根保証契約は、主たる債務の元本の確定すべき期日の定めがない場合でも、その効力を生じる
・主たる債務につき期限が延長された場合、その効力は保証債務にも及ぶ
債権譲渡
・債権譲渡の予約について確定日付のある証書による債務者の承諾がされても、予約の完結による債権譲渡の効力は、その承諾をもって第三者に対抗することができない
・将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約は、その締結時において目的債権の発生が確実に期待されるものでなくても、効力を生じる
・同一の債権を目的とする債権譲渡と債権差押えとの間の優劣は、確定日付のある譲渡通知が債務者に到達した日時と債権差押命令が第三債務者に送達された日時の先後で決する
・債権が二重に譲渡され、第一の債権譲渡について確定日付のある証書による通知が債務者に到達した後、第二の債権譲渡について確定日付のある証書による通知が債務者に到達した場合、第一の債権譲渡の確定日付が第二の債権譲渡の確定日付に遅れるときでも、第一の債権譲渡の譲り受け人は、債権の取得を第二の債権譲渡の譲受人に対抗することができる
債務者の意思
・債権者は、債務者の意思に反して、金銭債務を免除することができる
・第三者は、債務者の意思に反しても、金銭債務を主たる債務とする保証をすることができる
・金銭債務の物上保証人は、債務者の意思に反して、金銭債務を弁済することができる
・債権者と第三者とは、債務者の意思に反して、第三者に債務者を交替する更改をすることができる
・債権者は、債務者の意思に反して、債権者が第三者に対して負う金銭債務について、債務者に対する金銭債権をもって代物弁済をすることができる
弁済の提供
・特定物の売主は、その特定物を売買契約の締結当時から自己の住所に保管している場合、その引渡債務について弁済の提供をするに当たり、買主に対し、引き渡しの準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる
・賃借人には債務不履行がないのに、賃貸人が債務不履行による賃貸借契約の解除を主張して賃料の受領を拒絶し、口頭の提供をしても賃料の弁済を受領しない意思が明確である場合、賃借人は、賃料債務について、口頭の提供をしなくても、履行遅滞の責任を負わない
・甲土地の賃貸人がその賃料の支払いを催告したのに対し、賃借人が、賃貸借の目的物ではない乙土地も共に賃貸借の目的物であると主張して、甲土地の賃料額を超える額の金員を、その全額が受領されるのでなければ支払わない意思で提供した場合、債務の本旨に従った弁済の提供があったものとはいえない
・売買代金債権が譲渡され、債務者対抗要件が具備された場合、債務者によるその代金の弁済の提供は、売買代金債権の譲渡人の現在の住所においてしても足りず、売買代金債権の譲受人の現在の住所においてしなければならない
・不法行為の加害者Aが被害者Bに対して第一審判決で支払を命じられた損害賠償金1億円の全額について弁済の提供をしたが、その後、控訴審判決において損害賠償金が2億円に増額され、それが確定した場合、Aがした弁済の提供は、その範囲において有効である
更改・混同
・債権者の交代による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない
・保証人が主たる債務者を単独で相続した場合、保証債務を担保するために抵当権が設定されているときは、保証債務は消滅しない
・Aが所有する甲建物の賃借人BがAから甲建物を譲り受けて占有を継続していたが、CがAから甲建物を譲り受け、その旨の所有権移転登記を経由したため、Bにおいて甲建物の所有権の取得をCに対抗することができなくなったときは、賃借権は、Cに対する関係で消滅しなかったものとなる
・消費貸借契約の成立後、第三者が借り主と連帯して債務弁済の責任を負担する併存的債務引受を約することは、更改に当たらない
・更改の当事者は、更改前の債務の目的の限度でも、その債務の担保として第三者が設定した抵当権を、その第三者の承諾を得ずに更改後の債務に移すことができない
同時履行
・売買の目的物である未登記建物に種類又は品質に関する契約内容の不適合があることを理由に売買契約が解除された場合、売主の代金返還義務と買主の建物返還義務とは、同時履行の関係にある
・未成年者が行為能力の制限を理由に動産売買契約を取り消した場合、両当事者が互いに負う返還義務は、同時履行の関係にある
・有償の委任契約における委任者の報酬支払義務と受任者の事務処理義務とは、同時履行の関係にない
・建物賃貸借契約が終了し賃借人が造作買取請求権を行使した場合、賃貸人の造作買取代金支払義務と賃借人の建物明け渡し義務とは、同時履行の関係にない
・期間満了による建物の賃貸借契約終了に伴う賃借人の建物明渡義務と賃貸人の敷金返還義務とは、同時履行の関係にない
契約
・死因贈与は、負担付ですることができる
・準消費貸借は、目的物の引渡しがなくても成立する
・使用貸借は、書面でしなくても成立する
・寄託は、報酬を定めなくても成立する
・民法上の組合契約の出資は、金銭を目的とするものに限られない
契約総論(AとBは、2020年4月1日、A所有の中古自転車(以下「甲」という)を、同月10日引き渡し、同月20日代金支払の約定でBに売却する旨の売買契約を締結した)
・甲は、2020年4月8日、Bの責めに帰すべき事由により滅失した。この場合において、AがBに対して同月20日に代金の支払を請求したときは、Bは、この請求を拒むことができない
・Aは、Bに対し、2020年4月10日、甲を引き渡したが、甲には売買契約の締結前から種類又は品質に関する契約内容の不適合があった。この場合において、その不適合の存在により催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるときは、Bは、売買契約を解除することができる
・AがBに約定どおり甲を引き渡さなかったことから、Bは、Aに対し、2020年4月21日、代金につき弁済の提供をしないまま、甲の引渡しを求めた。この場合、Aは、Bに対し、同時履行の抗弁権を主張して、Bからの引渡請求を拒むことができる
・Aは、Bに対し、2020年4月10日、甲を引渡したが、Bは、同月20日を経過しても代金を支払わず、同月21日、事情を知らないCに甲を売却し、引渡した。この場合において、Aが相当の期間を定めて催告してもBが代金を支払わないとき、Aは、Bとの間の売買契約を解除しても、Cに対し、甲の返還を求めることはできない
・Aは、Bに対し、2020年4月25日、甲を引渡したが、Bは、Aに対し、その後も代金を支払っていない。この場合、Aは、Bに対し、甲の代金及び同月21日からの利息の支払いを求めることはできない
賃貸借
・賃貸借は、書面でしなくても、その効力を生じる
・賃貸借の存続期間は、50年を超えることができない
・当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、賃貸人がその期間内に解約をする権利を合意により留保したときは、賃貸人は、いつでも解約の申入れをすることができる
・賃貸借の期間が満了した後賃借人が土地の仕様を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定される
・賃貸借の期間を定めなかった場合において、当事者が解約の申入れをしたときは、賃貸借は、解約申入れから1年を経過した時に終了する
請負人の担保責任
・仕事の目的物に重要でない種類又は品質に関する契約内容の不適合がある場合において、その修補に過分の費用を要するときは、注文者は、請負人に対し、目的物の修補を請求することができない
・仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであり、その修補を請求することができる場合であっても、注文者は、請負人に対し、目的物の修補に変わる損害賠償を請求することができる
・請負人は、担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れない
・仕事の目的物の契約内容の不適合が注文者の与えた指図によって生じたとき、請負人は、その指図が不適当であることを知りながら注文者に告げなかったときは、担保責任を負う
・建物の建築の請負において、注文者による契約内容の不適合を理由とする目的物の修補の請求は、注文者がその不適合を知った時から1年以内にしなければならない
不法原因給付
・強行法規に違反してされた給付であっても、不法原因給付に該当しないことがある
・贈与に基づく動産の引渡しが不法原因給付に該当し、不当利得に基づく動産の返還請求をすることができない場合、贈与者は、受贈者に対し、所有権に基づく動産の返還請求をすることができない
・登記された建物が不倫関係の維持を目的として贈与され、受贈者に引き渡されたが、所有権移転登記手続はされていない場合、贈与者は、受贈者に対し、建物の明渡請求をすることができる
・不法原因給付の給付者と受領者との間において、その給付後に、その原因となった契約を合意の上解除してその給付を変換する特約をした場合、給付者は、その返還を請求することができる
・消費貸借が、その成立の経緯において、貸主の側に少しでも不法があったとき、借り主の側に多大の不法があった場合には、貸主は貸金の返還を請求することができる
不法行為
・土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じ、Aがその工作物の占有者として損害賠償の責任を負う場合において、その損害を賠償したAは、その損害の原因について責任を負うBに対し、求償権を行使することができる
・Aが所有する甲建物の設置又は保存に瑕疵があることによってBに損害が生じた場合には、その瑕疵がAの前の所有者が甲建物を所有していた時期に生じたものであるときであっても、Aは、甲建物の所有者として損害賠償の責任を負う
・Aが所有する樹木の植栽又は支持に瑕疵があることによってBに損害が生じた場合、Aが相当の注意をもってその管理をしていたときでも、Aが損害賠償の責任を負う
・Aがその所有する甲建物をBに賃貸し、Bが甲建物をCに転貸し、それぞれ引渡しがされた場合には、甲建物の設置又は保存に瑕疵があることによって第三者に生じた損害について、Bが占有者として損害賠償の責任を負うことがある
・土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによってAに損害が生じ、その工作物の占有者Bが損害賠償の責任を負う場合において、Bが無資力であっても、その工作物の所有者は損害賠償の責任を負わない
過失相殺・損益相殺
・複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において、その交通事故の原因となったすべての過失の割合(いわゆる絶対的過失割合)を認定することができるときには、絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負う
・被害者に対する加害行為と加害行為前から存在した被害者の疾患とが共に原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、過失相殺の規定を類推適用して、被害者の疾患を考慮することができる
・被害者の過失を考慮するためには、被害者に自利を弁識する能力が備わっていれば足り、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能が備わっていることを要しない
・内縁の夫が運転する自動車に同乗していた者が、内縁の夫と第三者の双方の過失による交通事故で負傷し、第三者に対し損害賠償を請求する場合において、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができる
・不法行為により死亡した被害者の相続人が加害者に対し不法行為に基づく損害賠償を請求した場合、裁判所は、生命保険契約に基づいて給付される死亡保険金の額を、損益相殺により損害賠償額から控除することができない
婚姻
・成年被後見人は、成年後見人の同意がなくても婚姻をすることができる
・婚姻の届出自体については当事者間に意思の合致があったとしても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものにすぎないときは、婚姻はその効力を生じない
・女性は、前婚の解消の時に懐胎していなかった場合には、前婚の解消の日から起算して100日以内であっても、再婚をすることができる
・養親は、養子と離縁した場合でも、その者と婚姻することはできない
・A男がB女を強迫して婚姻を成立させた後に、強迫を理由として婚姻が取り消された場合でも、B女がその婚姻中に懐胎して子が出生したとき、出生した子は、A男の子と推定される
夫婦
・夫婦の一方が他の一方に対して有する債権について、婚姻中に消滅時効が完成することはない
・夫婦である父母が共同して親権を行う場合において、その一方が子を代理する権限を共同名義で行使したときは、それが他の一方の意思に反したときであっても、代理行為の相手方が悪意でない限り、そのためにその行為の効力は妨げられない
・夫婦の一方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合であっても、裁判所は、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、他の一方による離婚の請求を棄却することができる
・夫婦の一方について成年後見開始の審判がされた場合、他の一方が成年後見人になるとは限らない
・夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をした場合、他の一方は、その第三者に対し責任を負わない旨を予告していたときは、その法律行為によって生じた債務について、連帯してその責任を負わない
父母の離婚
・父母の離婚により、子が母と氏を異にすることになった場合、その子が母の氏を称するためには、家庭裁判所の許可を得た上で、戸籍法の定めるところにより届け出ることが必要である
・この出生前に父母が離婚した場合には、母がその子の親権者となるが、その子が出生した後に、父母の競技によって父を親権者と定めることができる
・婚姻中の父母が別居し、子と同居していない親と同居している親との間で、子との面会交流について協議が整わない場合、父母の離婚前は、家庭裁判所は、面会交流について相当な処分を命ずることができる
・父母が協議上の離婚をする際に、その協議により子を監護すべき者を定めたときでも、家庭裁判所は、その定めを変更することができる
・父母が離婚した場合において、親権者と定められた母が死亡したときは、生存している父が直ちに親権者とはならず、原則として未成年後見が開始する
特別養子縁組(A及びBの実子であるCを養子とし、D及びEを養親とする特別養子縁組)
・家庭裁判所が特別養子縁組を成立させるためには、D及びEの請求が必要である
・A及びBがCを虐待していた場合には、CとD及びEとの間で特別養子縁組を成立させるに当たり、A及びBの同意を得る必要はない
・特別養子縁組が成立した場合、A及びBとCとの親族関係は終了する
・特別養子縁組が成立した場合、D及びEは、特別養子縁組の離縁を請求することができない
・家庭裁判所は、D及びEが婚姻していない場合、Cとの特別養子縁組を成立させることができない
相続
・相続人が数人ある場合において、被相続人が祖先の祭祀を主宰すべき者を指定していなかったとしても、被相続人が所有していた墳墓は、遺産分割の対象とならない
・被相続人が他人の過失による交通事故によって即死した場合でも、その事故による被相続人の精神的損害についての慰謝料請求権は、相続の対象となる
・遺産分割は、相続の承認又は放棄をすべき期間内にも、することができる
・複数の相続人が被相続人から賃借人の地位を承継したときは、被相続人が延滞していたその賃貸借に係る賃料債務は可分債務となる
・遺産分割後にいさんである建物に種類又は品質に関する不適合があったことが判明した場合、その建物を遺産分割により取得した相続人は、他の相続人に対し、担保責任を追及することができる
遺産分割
・共同相続人A及びBのうち、Bが遺産分割協議書を偽造して、相続財産である甲不動産についてBへの所有権移転登記をした場合、Bは、Aの相続回復請求権の消滅時効を援用することができない
・共同相続人である子A及びBが被相続人である父Cの唯一の相続財産である甲不動産について遺産分割をした後、認知の訴えにより、DがCの子であるとされた場合において、Dが遺産分割を請求しようとするときは、Dは、価額のみによる支払いの請求権を有する
・被相続人が、共同相続人A及びBのうち、Aに甲不動産を相続させる旨の遺言を残して死亡し、その遺言が遺産分割の方法の指定と解される場合であっても、AB間の遺産分割協議を経ずに、Aは高不動産を取得することができる
・被相続人は、5年を超えない禁止期間を限定して、遺言で遺産の分割を禁ずることができる
・A及びBが共同相続した甲不動産をAが遺産分割協議により取得した場合において、相続開始から遺産分割までの間に甲不動産について生じた賃料債権は、その協議で特に定めなかったときは、相続分に応じて各共同相続人に帰属する
人の死亡
・使用貸借は、貸主の死亡によっても、その効力を失わない
・組合員は死亡によって脱退する
・代理権を授与した本人が死亡したら、代理権は消滅する
・寄託者が死亡した場合、返還時期の定めがあり、その期限が到来していなければ、受寄者は寄託物を返還することができない
・受遺者が遺言者よりも先に死亡したときは、受遺者の地位は、相続により受遺者の相続人に承継されない
物の保存・財産の管理
・特定物の引渡しを目的とする債権の債務者が負う目的物の保存の義務は、特約により軽減することができる
・相続人は、相続の承認又は放棄をするまでの間、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理すれば足りる
・特定物の引渡しを目的とする債権の債務者は、債権者に受領遅滞があった場合、善良な管理者の注意をもって目的物を保存する義務を負わない
・贈与契約の贈与者は、目的物の引き渡しまでの間、自己の財産に対するのと同一の注意をもって目的物を保存するのでは足りず、善良な管理者の注意義務を負う
・限定承認者は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理する義務を負う
物権
・不特定物を売買契約の目的とした場合、その目的物が特定しない限り、所有権は買主に移転しない
・金銭の所有権者は、その占有者と一致しないことがある
・物権は、権利を目的として成立することがある
・物権は、一筆の土地の一部について成立することがある
・複数の物の上に一つの物権の効力が及ぶことがある
弁済の充当
・法定充当において、債務者のした給付が数個の債務の全てを消滅させるのに足りず、かつ、全ての債務が弁済期にあるときは、その給付は、債務者のために弁済の利益が多い債務に先に充当される
・債務者のした給付が数個の債務の全てを消滅させるのに足りない場合に、債務者は給付の時に充当の指定をせず、債権者が給付の受領の時に特定の債務に充当する旨を指定したところ、債務者が直ちに異議を述べたときは、債権者のした指定は効力を有しない
・債務者が1個の債務について費用、利息及び元本を支払うべき場合において、債務者のした給付がそれらの全部を消滅させるのに足りないときは、債権者と債務者がその給付を利息に充当する旨を合意すれば、その給付は利息に充当される
・債務者が1個の債務について費用、利益及び元本を支払うべき場合において、債務者のした給付がそれらの全部を消滅させるのに足りないときは、債務者が給付の時にその給付を元本に充当する旨を指定しても、その給付は元本に充当されない
財産分与
・離婚に伴う財産分与は、離婚後における一方の当事者の生計の維持を図ることを目的としてもすることができる
・離婚に伴う財産分与請求権については、協議又は審判その他の手続によって具体的内容が形成されるまでは、これを保全するために債権者代位権を行使することはできない
・離婚に伴う財産分与を得た者は、その財産分与が損害賠償の要素を含む種子とは解されないときには、別個に不法行為を理由として離婚による慰謝料を請求することを妨げられない
・離婚に伴う財産分与としてされた財産処分は、詐害行為として取り消されることがある
・内縁の夫が死亡して内縁関係が解消したときには、内縁の妻は、内縁の夫の相続人に対し、財産の分与を請求することができない
補助
・家庭裁判所は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分であり補佐開始の原因がある者については、補助開始の審判をすることができない
・本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない
・補助開始の原因が消滅したときでも、家庭裁判所が、職権で補助開始の審判を取り消すことはできない
・補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる
・家庭裁判所が特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をした場合であっても、被補助人は、その法律行為を自らすることができる
法人
・法人は、その定款に記載された目的に含まない行為であっても、その目的遂行に必要な行為については、権利能力を有する
・理事が法人の機関として不法行為を行い、法人が不法行為責任を負う場合には、その理事も、個人として不法行為責任を負うことがある
・法人の代表者が職務権限外の取引行為をし、当該行為が外形的に当該法人の職務行為に属すると認められる場合であっても、相手方がその職務行為に属さないことを知っていたときは、法人は、代表者の当該行為に基づいて相手方に生じた損害の賠償責任を負わない
・外国人が享有することのできない権利は、認許された外国法人も、その権利を取得することができない
・設立登記が成立要件となっている法人について、設立登記がなされていなければ、法人としての活動の実態がある場合でも、権利能力は認められない
錯誤
・錯誤を理由とする意思表示の取消しの可否について、錯誤の重要性は、一般人を基準として判断される
・AのBに対する意思表示がAの錯誤を理由として取り消すことができるものである場合、Bは、Aの錯誤を理由としてAの意思表示を取り消すことができない
・負担のない贈与について贈与者であるAの錯誤を理由とする取消しがされたが、受贈者であるBが既に当該贈与契約に基づいて給付を受けていた場合、Bは、給付を受けた時に当該贈与契約が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度において変換の義務を負う
・AのBに対する意思表示が錯誤を理由として取り消された場合、Aは、その取消し前に利害関係を有するに至った善意無過失のCに、その取消しを対抗することができない
・AのBに対する意思表示が錯誤に基づくものであって、その錯誤がAの重大な過失によるものであった場合、Aは、BがAに錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき又は、BがAと同一の錯誤に陥っていたときを除いて、錯誤を理由としてその意思表示を取り消すことができない
無権代理(Aは、Bの代理人と称して、Cとの間でBの所有する土地をCに売却する旨の売買契約を締結したが、実際にはその契約を締結する代理権を有していなかった)
・AがCに対する無権代理人の責任を負う場合、Aは売買契約の履行をするか、又は損害賠償責任を負うかを自ら選択することができず、相手方の選択に従う
・Bが売買契約を追認した場合、AはCに対する無権代理人の責任を負わない
・代理権を有しないことを知らないことにつきCに過失がある場合でも、Aは、自己に代理権がないことを知っていたときは、Cに対する無権代理の責任を負う
・売買契約の締結後にAがDと共にBを相続した場合、Dの追認がない限り、Aの相続分に相当する部分においても、売買契約は当然に有効となるものではない
・売買契約の締結後にBがAを単独で相続した場合、売買契約は当該相続により当然に有効となるものではない
消滅時効
・債務不履行に基づく損害賠償請求権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しない場合、時効によって消滅する
・詐欺を理由とする取消権は、詐欺の事実に気づいた時から5年間行使しない場合、時効によって消滅する
・不法行為に基づく損害賠償請求権は、不法行為の時から20年間行使しない場合、時効によって消滅する
・10年より短い時効期間の定めのある権利が確定判決によって確定した場合、その時効期間は、10年となる
・定期金の債権は、債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から10年間行使しない場合、時効によって消滅する
物権的請求権
・Aが地上権を有する甲土地に無断でBがその所有する自動車を放置した場合、Aは、Bに対し、地上権に基づく妨害排除請求権の行使として自動車を撤去するよう求めることができる
・Aが所有する鉄塔が自然災害により傾き、鉄塔に隣接するBの所有する甲建物を損傷させるおそれが生じた場合において、Bが所有権に基づく妨害予防請求権の行使として甲建物を損傷させないための措置を講ずるよう求めたときは、Aは、過去に実際に一度でも甲建物を損傷させたことがないことを理由としてBの請求を拒むことができない
・Aの所有する自動車がBの所有する山林に無断で放置され、20年が経過した場合において、BがAに対して所有権に基づく妨害排除請求権の行使として自動車の撤去を求めたとき、Aは、妨害排除請求権の消滅時効を援用してBの請求を拒むことができない
・Aが、A所有の甲土地に洪水のため流されてきた自動車の所有者であるBに対し、所有権に基づく妨害排除請求権の行使として自動車を撤去するよう求めた場合、Bは、所有権侵害について故意過失がないことを主張立証しても、Aの請求を拒むことはできない
・Aの所有する甲土地に無断でBがその所有する自転車を放置した場合において、AがBに対して所有権に基づく妨害排除請求権の行使として自転車を撤去するよう求めたときは、Bは、自己が未成年者であることを理由としてAの請求を拒むことはできない
不動産の物権変動
・A所有の甲土地をAがBに売却し、その後Aが甲土地をCに対し売却してその旨の登記がされ、更にCが甲土地をDに対し売却してその旨の登記がされた場合において、CがBに対する関係で背信的悪意者に当たるときは、Bは、Dに対し、甲土地の所有権を主張することができない
・A所有の甲土地をAがBに売却し、その旨の登記がされたが、AがBの詐欺を理由としてAB間の売買契約を取り消した後、この取り消しについて善意無過失のCに対しBが高土地を売却し、その旨の登記がされた場合、Aは、Cに対し、甲土地の所有権を主張することができない
・A所有の甲土地をAがBに売却し、更にBがCに売却し、それぞれその旨の登記がされた場合において、その後、AがAB間の売買契約をBの甲土地の代金不払いを理由に解除したときは、AはBの代金不払いの事実を知らないCに対し、甲土地の所有権を主張することができない
・A所有の甲土地をAがBに売却し、その旨の登記がされた場合において、その後、これより前から所有の医師をもって高土地を占有していたCについて時効取得が完成したときは、Cは、Bに対し、甲土地の所有権を主張することができる
・甲土地を所有していたAが遺言を残さずに死亡し、BとCがAを共同相続し、Cが甲土地をBCの共有とする共同相続登記をしてCの持分にDのために抵当権を設定し、その旨の登記がされた場合において、その後、BCの遺産分割協議により甲土地がBの単独所有とされたときは、Bは、Dに対し、抵当権設定登記の抹消を請求することができない
即時取得
・Aは、自己所有の宝石をBに売却して現実の引渡しをした。その後、Bは、宝石をCに売却して現実の引渡しをした。さらに、その後、Aは、AB間の売買契約をBの強迫を理由として取り消した。この場合、Cは、即時取得により宝石の所有権を取得することがある
・未成年者Aは、自己所有の宝石をBに売却して現実の引渡しをした。その後、Aは、AB間の売買契約を未成年であることを理由として取り消した。この場合、Bが即時取得により宝石の所有権を取得することはない
・Aは、B所有の宝石をBから賃借して引渡しを受けた上、宝石をCに預けていたが、宝石をDに売却し、Cに対し、宝石を今後Dのために専有するよう命じ、Dがこれを承諾した。この場合、Dは、宝石がA所有であると信じ、かつ、そのことに過失がなければ、即時取得により宝石の所有権を取得する
・Aは、Bが置き忘れた宝石を、自己所有物であると過失なく信じて持ち帰った。この場合、Aが即時取得により宝石の所有権を取得することはない
・Aは、BがCから賃借していた宝石を盗み、Dに贈与した。Dが宝石をAの所有物であると過失なく信じて現実の引渡しを受けた場合、Bは、宝石の盗難時から2年間は、Dに宝石の回復を請求することができる
占有の訴え
・Aは自己の所有するコピー機をBに賃貸していたが、Bはコピー機の賃貸借契約が終了した後もコピー機を使用し続け、Aに変換しなかった。この場合、Aは、Bに対し、占有回収の訴えによりコピー機の返還を請求することはできない
・Aは、底面に「所有者A」と印字されたシールを貼ってある自己所有のパソコンをBに窃取された。その後、Bは、パソコンの外観に変更を加えることなく、パソコンを盗難の事情を知らないCに譲渡した。この場合、Aは、Cに対し、占有回収の訴えにより同パソコンの返還を請求することはできない
・Aは自己の所有する工作機械をBに賃貸していたが、Bは、工作機械の賃貸借契約継続中に工作機械をCに窃取された。この場合、Bは、Aから独立して、Cに対して占有回収の訴えを提起することができる
・Aは、自己の所有する自転車をBに詐取された。この場合、Aは、Bに対し、占有回収の訴えにより自転車の返還を請求することはできない
・Aは、別荘地に土地を所有していた。その隣地の所有者であったBは、Aに無断で境界を越えてA所有の土地に塀を作り始め、2年後にその塀が完成した。Aは、この時点において、Bに対し、占有保持の訴えによりその丙の撤去を請求することはできない
地上権
・地上権者は、地上権設定者に対し、その地上権の設定登記を請求する権利を有する
・約定による地上権の存続期間に、制限はない
・地上権は、工作物又は竹木を所有する目的で土地を使用する権利である
・地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる
・地上権は、地上権設定者の承諾を得なくても、譲渡することができる
先取特権
・法人に対して電気料金債権を有する者は、供給した電気がその代表者及びその家族の生活に使用されていた場合でも、法人の財産について一般の先取特権を有しない
・旅館に宿泊客が持ち込んだ手荷物がその宿泊客の所有物でなく他人の所有物であった場合、旅館主は、その手荷物がその宿泊客の所有物であると過失なく信じたときであっても、その手荷物について旅館の宿泊の先取特権を行使することができる
・動産の売り主は、買主がその動産の転売によって得た売買代金債権につき、買主の一般債権者が当該売買代金債権を差し押さえられた後でも、動産の売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができる
・不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない
・建物賃貸借において、賃借権が適法に譲渡され、譲受人が建物に動産を備え付けた場合、賃貸借関係から生じた賃貸人の債権が譲渡前に発生していたものであっても、不動産の賃貸の先取特権はその動産に及ぶ
抵当権の消滅(債務者Aは債権者BのためにAの所有する不動産甲に抵当権を設定し、その旨の登記がされた)
・Aは、抵当権を実行することができる時から20年が経過しても、被担保債権が消滅していなければ、抵当権が時効により消滅したと主張することができない
・甲について、その後、AがCのために抵当権を設定し、その旨の登記がされた場合において、BがAから甲を買い受けたときは、Bの抵当権は消滅しない
・Aの一般債権者が甲につき強制競売の申立てをし、当該強制競売手続において甲が売却されたときは、Bの抵当権は消滅する
・甲について、その後、Aから譲渡担保権の設定を受けたDは、譲渡担保権の実行前は、抵当権消滅請求をすることにより、Bの抵当権を消滅させることができない
・甲が建物である場合において、Aが故意に甲を消失させたときでも、Bの抵当権は消滅する
根抵当権(債務者Aが債権者Bのために自己の所有する不動産に根抵当権を設定した)
・Bは、元本の確定前は、Aに対する他の債権者Cに対してその順位を譲渡することができない
・Bの根抵当権にDのために転根抵当権が設定され、BがAに転根抵当権の設定の通知をした場合、Aは、元本の確定前であれば、Dの承諾を得なくてもBに弁済することができる
・元本の確定前に、Bが根抵当権によって担保されていた債権をEに譲渡した場合、それに伴って根抵当権はEに移転しない
・後順位抵当権者Fがいる場合、A及びBが元本確定期日を変更するためには、Fの承諾は必要ない
・Bが数個の不動産について根抵当権を有する場合、同一の債権の担保として数個の不動産の上に根抵当権が設定された旨の登記がその設定と同時にされたときを除き、各不動産の代価についてそれぞれの極度額まで優先権を行使することができる
譲渡担保
・所有する土地に譲渡担保権を設定した債務者は、債務の弁済期が経過した後、債権者が担保権の実行を完了する前であれば、債務の全額を弁済して目的物を受け戻すことができる
・所有する機械に譲渡担保権を設定して譲渡担保権者に現実の引渡しをした債務者Aは、その債務の弁済をする場合、債務の弁済と譲渡担保権者のAに対する目的物の引き渡しとの同時履行を主張することはできない
・債務者Aが所有する構成部分の変動する在庫商品に債権者Bのために譲渡担保権が設定された後、商品が滅失し、その損害を填補するための損害保険金請求権をAが取得したときは、Aが営業を継続している場合、Bは、合意があるなどの特段の事情がない限り、当該保険金請求権に対して物上代位権を行使することができない
・土地の賃借人が借地上に所有する建物に譲渡担保権を設定した場合、その効力は原則として賃借権に及ぶ
・譲渡担保権によって担保されるべき債権の範囲は、強行法規や公序良俗に反しない限り、設定契約の当事者間において元本、利息及び遅延損害金について自由に定めることができる
履行不能(AとBは、Aが所有する骨董品甲をBに100万円で売却する旨の売買契約を締結した)
・売買契約の締結後、Bが代金100万円を支払ったが、引渡期日前に、AがBに対して甲を引き渡すつもりは全くないと告げ、Bの働きかけにもかかわらず翻意しないときは、Bは、引渡期日の到来を待つことなく、Aに対し、債務の履行に代わる損害の賠償を請求することができる
・売買契約の締結の前日に甲が焼失していたときでも、当該売買契約は効力を生じる
・売買契約の締結後、Bが代金100万円を支払ったが、Aが甲をBに引き渡す前に、甲がBの責めに帰すべき事由により焼失した場合において、Aが甲の焼失による損害を填補するために支払われる損害保険金70万円を得たときは、Bは、Aに対し、70万円の支払いを請求することができる
・売買契約の締結後、Aが甲をBに引き渡す前に、甲が第三者の失火により焼失したときでも、Bの代金支払債務は当然に消滅しない
・Aが引渡し期日に甲の引渡しの提供をしたところ、Bが正当な理由なく受領を拒絶したため、Aの下で甲を保管中に、Aの重過失により甲が滅失したときは、Bは、代金の支払いを拒むことができる
詐害行為取消権(Aは、その債権者を害することを知りながら、所有する骨董品甲をBに贈与し、その際、Bも甲の贈与がAの債権者を害することを知っていた)
・Cが詐害行為取消訴訟を提起する場合、Aは被告とならない
・Bが、甲の贈与がAの債権者を害することを知っていたDに甲を売却し、引き渡した場合、Cは、Dに対し、BD間の甲の売買の取消しを請求することができず、AB間の甲の贈与の取消しを請求する
・Bが、甲の贈与がAの債権者を害することを知っていたDに甲を売却し、引き渡した場合、Cは、Bに対し、AB間の甲の贈与の取消しを請求することができる
・Cによる詐害行為取消請求を認容する確定判決の効力は、Aの全ての債権者に対してもその効力を有する
・Bが、甲の贈与がAの債権者を害することを知っていたDに甲を売却し、引き渡した場合において、CのDに対する詐害行為取消請求を任用する判決が確定したときでも、Dは、Bに対し、代金の返還を請求することができない
連帯債務(ABCは、Dに対して、60万円の借入金債務(甲債務)を連帯して負担し、負担部分は均等とする合意をしていた)
・DがAに対して甲債務の支払請求訴訟を提起し、請求を認容する判決が確定した場合において、D及びBが別段の意思を表示していないときは、甲債務の消滅時効は、Bについては判決確定の時から新たにその進行を始めない
・DがCに対して甲債務を免除する意思表示をした場合において、D及びAが別段の意思を表示していないときは、DがAの債務を免除する意思を有していなかったとしても、Dは、Aに対して60万円の支払いを請求することができる
・甲債務と相殺適状にある30万円の乙債務をDがCに対して負担している場合において、Cが乙債務につき相殺を遠洋しない間に、DがAに60万円の支払いを請求したときは、Aは、20万円についてその支払いを拒むことができる
・Bは、甲債務の履行期にDに対して18万円を支払った場合、A及びCに求償することができる
・甲債務と相殺適状にある20万円の乙債務をDがCに対して負担している場合において、Aが、Cが甲債務の連帯債務者であることを知りながら、Cに通知せずにDに60万円を支払ってCに求償し、Cが乙債務との相殺をもってAに対抗したときは、Aは、Dに対し、相殺によって消滅すべきであった乙債務20万円の支払を請求することができる
預金(AはB銀行に預金口座を開設し、金銭を預け入れた)
・Cが、B銀行のDの預金口座に振り込みをするつもりで、誤ってAの預金口座への100万円の振り込みをCの取引銀行に依頼し、その振り込みが実行された場合、Cは、B銀行に対し、100万円の支払を請求することはできない
・Aが死亡してEとFがAを相続した場合、Eは単独で、B銀行に対し、A名義の預金口座の取引経過の開示を求めることができる
・AがB銀行に対して有する預金債権について、譲渡はできない旨の特約がされていた場合、AがGとの間で、その預金債権をGに譲渡する契約をしても、Gが特約について悪意または重過失であったときは、その譲渡は効力を生じない
・Aの預金口座に係る預金が定期預金の場合、B銀行は、やむを得ない事由がなくても、Aの同意なしに満期前に払い戻すことができる
・HがAに対する代金債務の全額をAH間の合意によりB銀行のAの預金口座への振り込みによって支払った場合、その債務は、Hの振り込みによってAがB銀行に対して同額の預金の払い戻しを請求する権利を取得した時に、弁済により消滅する
弁済による代位
・物上保証人は、被担保債権を弁済した場合、代位により取得した被担保債権につき、対抗要件を備えなくても、これを行使することができる
・保証人は、被担保債権の一部を弁済したが残債務がある場合、その弁済をした価額の限度において、代位により取得した被担保債権及びその担保権を単独で行使することはできず、債権者の同意を得て、債権者とともにその権利を行使することができる
・保証人Aと物上保証人Bとの間で、Aが自己の弁済した全額につき債権者に代位することができる旨の特約をした場合において、弁済をしたAが債権者に代位してB所有の不動産上の第一順位の抵当権を行使するときは、Aはその特約の効力を当該不動産の後順位抵当権者に主張することができる
・債権者が故意に担保を減少させたとしても、そのことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由がある場合、保証人は、その担保の減少に基づく免責を主張することはできない
・債権者が過失により担保を減少させた後に物上保証人から抵当目的不動産を譲り受けた者は、物上保証人と債権者との間に債権者の担保保存義務を免除する旨の特約がされていたために担保の減少に基づく免責が生じていなかった場合、債権者に対して担保の減少に基づく自己の免責を主張することはできない
安全配慮義務
・安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求する訴訟においては、原告は、安全配慮義務の内容を特定し、義務違反に該当する事実を主張立証する責任を負う
・雇用契約上の安全配慮義務違反により死亡した者の遺族が債務不履行に基づく損害賠償を請求する場合には、遺族固有の慰謝料を請求することはできない
・元請企業は、下請け企業に雇用されている労働者に対しても、特別な社会的接触の関係に入ったものとして、信義則上、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負うことがある
・安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、損害発生の時から履行遅滞に陥るのではなく、履行の請求を受けた時から履行遅滞に陥る
・国の公務員である運転者Aが公務遂行中に道路交通法上の通常の注意義務に違反して自動車事故を起こし、同乗していた国の公務員Bが負傷した場合、国は、Bに対し、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務を負わない
法定利率・約定利率
・利息を生ずべき債権について約定利率の定めがないときは、その利率は、最初に利息が生じた時点における法定利率による
・法定利率の割合は、3年を一期とするその期ごとに見直されるが、変更されないこともある
・将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合、その費用を負担すべき時までの利息相当額を法定利率により控除することができる
・債務者が貸金返還債務の履行を遅滞した場合、債権者は、法定利率または約定利率により算定された額を超える損害が生じたことを証明しても、当該損害の賠償を請求することができない
・金銭消費貸借契約の利息について法定利率を超える約定利率の定めがある場合、返済を遅滞した借主は、元本及び返済期日までの約定利率の割合による利息に加えて、当該金銭消費貸借契約を締結した時点における約定利率の割合による遅延損害金を返済期日の翌日から支払済みまで支払わなければならない
契約の成立
・AがBに対し、承諾の期間を申し込みから1週間と定めて撤回の権利の留保なく契約の申し込みをし、その2日後に申し込みを撤回したが、Bは申し込みから5日後に承諾した。この場合、契約は成立する
・Aが対話中にその終了後も契約の申し込みが効力を失わない旨を表示せずに対話者であるBに対して契約の申し込みをしたところ、Bは対話終了後の翌日に承諾した。この場合、契約は成立しない
・Bは、Aによる契約の申し込みに対し、承諾の通知を発した後に死亡したが、Aは、その承諾の通知の到達前にB死亡の事実を知っていた。この場合、契約は成立する
・AがBに対して契約の申し込みの通知を発した後に死亡したが、Aは自らが死亡したとすればその申し込みは効力を有しない旨の意思を表示しておらず、BはA死亡の事実を知らずに承諾した。この場合、契約は成立する
・AがBに対して承諾の期間を申し込みから1週間と定めて契約の申し込みをしたところ、Bは申込みから10日後に承諾した。この場合、契約は成立しない
売買(AB間においてAの所有する中古の時計甲の売買契約が締結された場合)
・売買契約において、Aが甲を引き渡した日から1ヶ月後にBが代金を支払うことが定められていた場合であっても、A及びBの債務の履行後に第三者Cの詐欺を理由として契約が取り消されたときの双方の原状回復義務は、同時履行の関係に立つ
・売買契約の締結時に甲がDの住所に存在していたとき、引き渡しをすべき場所について別段の意思表示がない限り、甲の引渡場所はDの住所である
・Bが、Eとの間で、売買契約における買主たる地位をEに譲渡する旨の合意をした場合、Aの承諾しなければ、買主たる地位はEに移転しない
・売買契約において契約の締結時には出生していなかったFに甲の所有権を取得させることが定められた場合、売買契約は有効である
・売買契約において第三者Gに甲の所有権を取得させることが定められ、Gの受益の意思表示がされた後、Aが甲の引き渡しを遅滞した場合、Bは、Gの承諾を得なければ、売買契約を解除することができない
他人の権利の売買
・売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合、買主は、契約時にその権利が売主に属しないことを知っていたとしても、それにより損害賠償の請求を妨げられない
・売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合、そのことについて売主の責めに帰すべき事由が存在しないときは、買主は売主に対して損害賠償請求をすることができない
・売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、その権利の一部が買主に移転されず、履行の追完が不能である場合、そのことについて買主の責めに帰すべき事由が存在しないときは、買主は、催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる
・売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合、買主は、契約時にその権利が売主に属しないことを知っていたときでも、契約を解除することができる
・売主が他人の権利を取得して買主に移転することができない場合、買主は、善意の売主に対しては、当該権利が他人の権利であることを知ったときから1年以内にその旨を通知しなくても、損害賠償の請求をすることができる
賃貸借
・賃貸不動産が譲渡され、その不動産の賃貸人たる地位がその譲受人に移転したときは、譲渡人が負っていた賃借人に対する費用の償還に係る債務は、譲受人が承継する
・賃貸人は、賃借人の責めに帰すべき事由によって賃貸物の使用及び収益のために修繕が必要となったときは、その修繕をする義務を負わない
・賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される
・賃借人が適法に賃借物を転貸し、その後、賃貸人が賃借人との間の賃貸借を合意により解除した場合、賃貸人は、その解除の当時、賃借人の債務不履行による介助犬を有していたときは、その合意解除をもって転借人に対抗することができる
・賃貸借が終了した場合、賃借人は、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗については、原状に復する義務を負わない
委任
・委任を解除した者は、その解除の時期により、相手方に対する損害賠償責任を負うことがある
・法律行為でない事務の委託については、法律行為の委任に関する民法の規定が準用される
・受任者は、委任事務を処理するのに必要な費用につき、その費用を支払う前でも、これを委任者に請求することができる
・委任者が死亡しても委任が終了しないこととする当事者間の特約がある場合、委任は、委任者が死亡しても当然には終了しない
・委任者が破産手続開始の決定を受けたことによって委任が終了した場合には、委任者は、破産手続開始の決定を受けたことを受任者に通知したとき、又は受任者が破産手続開始決定の事実を知っていたときでなければ、受任者に対し、委任の終了を主張することができない
組合
・組合員は、組合財産に属する金銭債権につき、その持ち分に応じて単独で権利を行使することができない
・組合の業務の決定は、業務執行者があるときは、組合員の過半数をもって行わない
・組合の存続期間を定めた場合であっても、各組合員はやむを得ない事由があるときは、脱退することができる
・組合の成立後に新たに加入した組合員は、その加入前に生じた組合の債務について弁済する責任を負わない
・組合員は、組合員の過半数の同意がある場合でも、生産前に組合財産の分割を求めることができず、組合員全員の同意が必要である
不当利得
・所有者から寄託された動産を受寄者が売却し、買主に即時取得が成立した場合、買主は、寄託者に対し、不当利得返還義務を負わない
・第三者からだまし取った金銭を用いて債務が弁済された場合において、第三者からだまし取った金銭を用いて債務者が弁済したことを知らなかったことについて債権者に過失があるときでも、債権者は、当該第三者に対して不当利得返還義務を負わない
・過失により弁済期が到来したものと誤信をして、弁済期が到来する前に債務の弁済としての給付を行った者は、弁済期が到来する前でも、その給付したものの返還を求めることができない
・債務者が債権の受領権限がない者に対し弁済をした場合において、真の債権者がその受領者に対して不当利得返還請求をしたときは、その受領者が、弁済をした債務者に過失があったことを主張して、請求を拒絶することはできない
・自らを債務者であると誤信して他人の債務を弁済した者は、債権者が善意でその債権を消滅時効により消滅させてしまった場合、債権者に対し弁済金の返還請求をすることができない
不法行為
・金銭債権を有する者が、その債務者を負傷させたことにより不法行為に基づく損害賠償債務を負った場合、当該金銭債権を自働債権、損害賠償債権を受働債権とする相殺をもって債務者に対抗することはできない
・報道により他人の名誉を毀損した報道機関は、その報道が公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図ることに出たものであって、摘示した事実が真実であると信ずるにつき相当な理由があった場合、その事実が真実であると証明できなかったとしても、不法行為責任を負わない
・子が他人の不法行為によって重傷を負った場合、その両親は、そのために子が生命を害されたときにも比肩すべき精神上の苦痛を受けたときは、自己の権利として加害者に慰謝料を請求することができる
・未成年者が責任能力を有し被害者に対する不法行為責任を負う場合であっても、その監督義務者に未成年者に対する監督義務違反があり、その義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係が認められるときには、監督義務者は被害者に対する不法行為責任を負う
・使用者が被用者の加害行為につき使用者責任に基づいて第三者に損害賠償責任を負う場合、当該被用者も、加害行為につき故意または重過失がなくても、当該第三者に対する損害賠償責任を負うことがある
普通養子縁組
・15歳未満の者が縁組をして養子となるには、その法定代理人の同意を得なければならない
・後見人が被後見人を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない
・配偶者のある者が配偶者の嫡出子を養子とする場合には、配偶者の同意を得ることを要する
・自己の孫を養子とする場合には、その孫が未成年者であっても、家庭裁判所の許可を得ることを要しない
・縁組の当事者の一方が死亡した場合には、他方の当事者は、家庭裁判所の許可を得なければ離縁することができない
親権を行う者とその子との間及び子相互間の利益相反行為
・親権者が利益相反行為をした場合には、その行為は無権代理行為となる
・親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をすることは、利益相反行為に当たる
・親権者とその数人の子が共同相続人である場合に、親権者が自ら相続の放棄をすると同時にその子全員を代理して相続の放棄をすることは、利益相反行為に当たらない
・親権者がその子の名義で金銭を借り受け、その子が所有する不動産に抵当権を設定する場合、親権者がその金銭を自らの用途に供する意図を有していたときでも、利益相反に当たらないが、代理権の濫用には当たりうる
・父母が共に親権者である場合に、父とその子との利益が相反する行為をするには、母が親権者として単独でその子のための代理行為をするのではなく、父は特別代理人の選任を求め、特別代理人と母と共同して代理行為をする必要がある
後見
・未成年後見人が数人ある場合、身上の監護に関する権限については、家庭裁判所は、職権で、各未成年後見人が単独で又は数人の未成年後見人が職務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができない
・成年後見人が成年被後見人を代理してその居住している建物を売却する場合には、家庭裁判所の許可を得なければならない
・未成年被後見人Aが成年に達した後後見の計算の終了前にAと未成年後見人との間で契約を締結した場合、Aは、その契約を取り消すことができる
・成年後見人が成年被後見人を代理して預金の払戻を受けるには、後見監督人があるときは、その同意を得る必要はない
・任意後見契約が登記されている場合に家庭裁判所が後見開始の審判をするには、本人の利益のため特に必要があると認めるときでなければならない
遺贈
・遺贈は、成年に達しなくても、15歳に達していれば、することができる
・寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額からいぞうん価額を控除した残額を超えることができない
・相続財産の一部の割合について包括遺贈を受けた者は、相続財産に属する債務を承継する
・Aが所有する甲不動産をBに生前贈与したが、所有権移転登記魅了のうちにCに遺贈する旨の遺言をし、Aの死亡後にAからCへの遺贈を原因とする所有権移転登記がされた場合、CがAの相続人であっても、Bは、Cに対し、甲不動産の所有権の取得を対抗することができない
・遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない
遺言の執行
・自筆証書遺言に係る遺言書を保管している相続人は、相続の開始を知った後、遅滞なく、遺言書を保管している旨を他の相続人に通知するのではなく、家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない
・遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる
・遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができ、遺言者の相続人がこれを行うことはできない
・遺産分割方法の指定として遺産に属する預金債権の全部を相続人の一人に承継させる旨の遺言があったときは、遺言執行者は、遺言者がその遺言に別段の意思を表示した場合を除き、その預金の払い戻しを請求することができる
・遺言執行者は、遺言者がその遺言に別段の意思を表示した場合を除き、やむを得ない事由がなくても、第三者にその任務を行わせることができる
相続・贈与
・特別受益に当たる贈与の価額がその受贈者である相続人の具体的相続分の価額を超える場合、その相続人は、超過した価額に相当する財産を他の共同相続人に返還する必要はない
・Aが、婚姻後21年が経過した時点で、Aとその配偶者Bが居住するA所有のマンション甲をBに贈与し、その後に死亡した場合、当該贈与については、その財産の価額を相続財産に算入することを要しない旨の意思表示(持戻し免除の意思表示)がされたものと推定される
・特別受益に当たる贈与は、地震により目的物が滅失した場合、相続開始の時においてなお原状のままであるものとしてその価額を定めるのではなく、滅失したものとして価額を定める
・不動産の死因贈与の受贈者Aが贈与者Bの相続人である場合において、限定承認がされたときは、死因贈与に基づくBからAへの所有権移転登記が相続債権者Cによる差押え登記よりも先にされたとしても、Aは、Cに対し、その不動産の所有権の取得を対抗することができない
・特別受益に当たる贈与は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものでない場合、相続開始前の10年間にしたものに限り、遺留分を算定するための財産の価額に算入される
承継人
・錯誤によって取り消すことができる行為は、錯誤による意思表示をした者の契約上の地位の承継人も、取り消すことができる
・時効の完成猶予の効力は、その事由が生じた当事者の承継人に対しても生じる
・占有者の包括承継人は、取得時効に関して、自己の占有のみを主張することもできる
・共有者の一人であるAが共有物について他の共有者であるBに対して有する債権は、Bの特定承継人に対して、行使することができる
・遺留分権利者の承継人は、遺留分侵害学に相当する金銭の支払いを請求することができる
撤回
・選択債権について債務者が選択権行使の意思表示をした場合、その意思表示は、債権の弁済期前であっても、債権者の承諾を得なければ、撤回することができない
・解除の意思表示は、撤回することができない
・相続の放棄は、相続の承認または法規をすべき期間内でも、撤回することはできない
・遺贈の承認は、遺贈義務者が履行に着手する前でも、撤回することができない
・遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない
登記
・Aが所有する甲土地上に、Bが無権原で乙建物を所有している。Bは、自ら乙建物の所有権保存登記をした後、乙建物をCに売却してその所有権を移転した。この場合において、BからCへの乙建物の所有権移転登記がされていないときは、Aは、Bに対し、所有権に基づき乙建物の収去及び甲土地の明け渡しを請求することができる
・Aが所有する甲土地をAから賃借したBは、甲土地上に建築した自己所有建物につき、Bの妻C名義で所有権保存登記をした。この場合において、Aが甲土地をDに売却してAからDへの所有権移転登記がされたときは、Bは、甲土地の賃借権をDに対抗することができない
・Aは、所有する甲土地のために、Bが所有する乙土地上に地役権の設定を受け、その旨の登記がされた。この場合において、Aが甲土地をCに売却してAからCへの所有権移転登記がされたときは、Cは、甲土地のための地役権をBに対抗することができる
・Aは、Bが所有する高建物を賃借してその引き渡しを受けた。この場合、Aは、Bに対し、賃借権の設定登記を請求することができない
・Aは、所有する甲土地につき、Bを第一順位とする抵当権及び、Cを第二順位とする抵当権をそれぞれ設定し、その旨の登記がされた。この場合において、甲土地のBの抵当権の被担保債権が消滅したときは、Cは、Bに対し、自己の抵当権に基づきBの抵当権設定登記の抹消を請求することができる
預貯金債権以外の金銭債権についての譲渡制限の意思表示
・譲渡制限の意思表示がされた債権が譲渡された場合において、その後に債務者が当該上とを承諾したときに当該債権の譲渡が譲渡の時に遡って有効になるのではなく、当初より有効である
・譲渡制限の意思表示がされた債権の差押えがされた場合、当該債権の債務者は、差し押さえ債権者に対し、譲渡制限の意思表示がされたことを理由としてその債務の履行を拒むことはできない
・譲渡制限の意思表示がされていることを知りながら債権を譲り受けた譲受人は、債務者が譲受人に対して任意に弁済をした場合、これを直接受けることができる
・譲渡制限の意思表示がされた債権が譲渡された場合、譲受人が譲渡制限の意思表示がされたことを過失なく知らなかったときであっても、債務者は、弁済の責任を免れるために、その債権の全額に相当する金銭を供託することができる
・譲渡制限の意思表示がされた債権の全額が譲渡された場合において、譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、債権譲渡について第三者対抗要件を備えた譲受人は、債務者にその債権の全額に相当する金銭の供託をするよう請求することができる
契約の解除
・解除権の行使について期間の定めがない場合において、相手方が、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をしたにもかかわらず、当該機関内に解除の通知を受けないときは、解除権は消滅する
・契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約の目的を達成することができない債務について、債務者が履行をしないでその時期を経過したときは、契約の解除がされたものとみなされて当該債務が当然に消滅するのではなく、催告をせずに解除することができる
・債務の一部の履行が不能である場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときは、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の全部の解除をすることができる
・解除権を有する債権者が、過失によって契約の目的物を著しく損傷した場合、その債権者が解除権を有することを知らなかったときは、解除権は消滅しない
・解除権が行使された場合の原状回復において、金銭以外の物を返還するときは、その物を受領した時以後に生じた果実をも返還する義務がある