働いている会社から不当に解雇された場合、労働者はいつまでにどのような争い方をすることができるのでしょうか。翻っていえば、使用者は労働者を解雇した場合、どれくらいの期間その解雇に関連した紛争の発生を覚悟しなければいけないのでしょうか。
そこで、今回は、不当解雇に関連して、労働者が個別労働紛争解決制度を用いる場合、労働審判を申し立てる場合、地位確認訴訟を行う場合、不法行為に基づく損害賠償請求を行う場合のそれぞれの手続の消滅時効についてご紹介したいと思います。
1.消滅時効に関する参考資料
日本において解雇無効を争う際の消滅時効等の手続面に関して検討するに際しては、厚生労働省のサイトで公表されている「第2回解雇無効時の金銭制度に係る法技術的論点に関する検討会」の検討事項に係る参考資料(https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000422855.pdf)が参考となります。
その中でも、今回は、具体的には同資料の64頁の図を紹介したいと思います。
2.それぞれの手続きにおける消滅時効
(1) 個別労働紛争解決制度
個別労働紛争解決制度とは、労働相談、助言・指導、あっせんをさすところ(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/index.html参照)、この個別労働紛争解決制度には消滅時効はないとされています。ただし、紛争の原因となった行為の発生から長期間経過しており、的確なあっせんを行うのが困難である紛争等については、あっせんを委任しない運用がなされています。
(2) 地位確認訴訟、労働審判
地位確認訴訟、労働審判に係る時効はないですが、民法536条2項に基づく賃金相当額の請求に当たっては、賃金債権は2年が消滅時効となります(労働基準法115条)。
なお、地位確認訴訟、労働審判に関しては時効はないですが、裁判例においては、解雇後長期間経過しているときは、事案により、解雇無効の主張が信義則に反するとされるものや、解雇を承認したものと認定されたものはあります。参考までにですが、日本国有鉄道事件(東京高判昭和53年6月6日労働判例301号32頁)では、解雇されてから8年後に解雇無効確認の訴えが提起された事案でしたが、解雇8年後に解雇無効を主張することは信義則に反しないとされた事案となっています。
(3) 不法行為に基づく損害賠償請求
不当解雇を不法行為として損害賠償請求をしていく際の消滅時効は2020年4月1日に施行された改正民法724条により、損害及び加害者を知った時から3年で消滅時効にかかり、不法行為の時から20年で除斥期間にかかることとなります。