日本における株式の種類

 株式会社とは、株式を発行して資金調達をして事業活動を行う会社であるところ、日本の株式会社が発行できる株式は大きく「普通株式」と「種類株式」に分けることができます。そこで、今回は、「普通株式」と「種類株式」の違いをご紹介したいと思います。

 なお、公開会社でない株式会社であれば属人的株式(会社法109条2項)を発行することができますが、今回はこの点は割愛してご説明します。

1. 普通株式

 「普通株式」とは、株式の内容について、会社法107条〔株式の内容についての特別の定め〕や108条〔異なる種類の株式〕に基づく定款の定めを何も置かない場合に発行される株式をさします(青山修著『種類株式・種類株主総会の登記実務』3頁(新日本法規出版株式会社、2009))。なお、英語で普通株式は“common shares”や“ordinary shares”となります。

2. 種類株式

 これに対し、「種類株式」とは、107条や108条の定めにより普通株式とは異なる、制限が付された内容で発行された株式をさします。

(1) 107

 “第107条1項 株式会社は、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができる。
 1号 譲渡による当該株式の取得について当該株式の承認を要すること
 2号 当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること
 3号 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること”

 107条の株式は別名、譲渡制限株式(1号)、取得請求権付株式(2号)、取得条項付株式(3号)と呼ばれたりもします。これらの株式を発行するには一定の事項を定款で定めておかなければならないとされています(107条2項)。そして、条文に「全部の株式」とあることから、107条の規定による株式発行する際には、すべて同一の制限が付された株式が発行されることとなります。

(2) 108条 

 もし「全部の株式」を対象としてではなく、内容が異なる種類の株式を2つ以上発行したい場合には108条の規定による株式発行をすることが必要となります。

 “第108条1項 株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、指名委員会等設置会社及び公開会社は、第9号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。

 1号 剰余金の配当
 2号 残余財産の分配
 3号 株主総会において議決権を行使することができる事項
 4号 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること
 5号 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること
 6号 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること
 7号 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること
 8号 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第478条第8項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの
 9号 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。次項第9号及び第112条第1項において同じ。)又は監査役を選任すること”

 このような株式は別名、議決権制限株式(3号)、譲渡制限株式(4号)、取得請求権付株式(5号)、取得条件付株式(6号)、全部取得条件付種類株式(7号)、拒否権付種類株式(8号)、取締役・監査役の選任種類株式(9号)と呼ばれたりもします。また、同条の種類株式を発行する株式会社は「種類株式発行会社」(2条13号)といわれます。これらの株式を発行するには一定の事項を定款で定めておかなければならないとされています(108条2項)。