日本の種類株式・会社法107条1項1号編

 以前の記事で「日本における株式の種類」という題で、普通株式と種類株式の違いについてご紹介しました。そこで、今回はもう少し種類株式のうち、会社法107条に基づいて発行される株式についてご紹介できればと思います。

 107条1項には3つの種類株式が規定されていますが、それぞれ、譲渡制限株式(1号)、取得請求権付株式(2号)、取得条項付株式(3号)と呼ばれたりすることもあります。それでは、まず譲渡制限株式にはどのような特徴があるのでしょうか。

 譲渡制限株式(107条1項1号)

 127条によると「株主は、その有する株式を譲渡することができる。」とあることからもわかる通り、株式は譲渡自由が原則です。これを「株式譲渡自由の原則」といったりもします。

 もっとも、株式を自由に譲渡できてしまうと、会社にとって不都合な者が株主となってしまう可能性があります。そこで、このような不都合性を排除するために、定款で株式譲渡自由の原則に制限を付すことが認められています(107条2項1号)。

 この譲渡制限株式が活用される具体的な場面としては、中小の同族企業があげられたりすることがあります(田伏岳人他著『会社法実務マニュアル 第2版 第3巻 株式・種類株式・新株予約権株式会社運営の実務と書式』26頁(ぎょうせい、2017))。

 また、具体的な定款記載例の1つとしては、下記のような条項を定款にいれることで譲渡制限株式を発行することが可能となります(田伏岳人他著『会社法実務マニュアル 第2版 第3巻 株式・種類株式・新株予約権株式会社運営の実務と書式』28頁(ぎょうせい、2017))。

 “(株式の譲渡制限)第○条 当会社の株式を譲渡するには、当会社の承認を受けなければならない。”

 もっとも、譲渡制限株式であっても、一切株式の譲渡が禁止されるわけではありません。では、具体的にどのような手続をとれば、株式が譲渡できるのでしょうか。

 この点、株主あるいは株式取得者から、株式会社に対し承認請求を求める手続を経れば、譲渡制限株式であったとしても、株式を譲渡することが可能です(136条、137条1項)。具体的には、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議により、譲渡するかの決定がなされます(139条1項本文)。もちろん定款で別段の定めをした場合には、定款で定められた機関の承認で譲渡の決定をすることも可能です(139条1項ただし書)。そのため、例えば、取締役会設置会社であっても、定款で譲渡承認機関を株主総会とすることも可能です。

 もっとも、株式取得者から請求をする場合には、株式を取得するというメリットを得る人からの請求ということもあり、誤った請求がなされ、利害関係人の利益を害することを防止する観点から、原則として、株主(条文の文言を正確に記載すると「株式の株主として株主名簿に記載され、若しくは記載された者又はその相続人その他の一般承継人」)と共同して行うことが求められています(137条2項)。共同で請求をせずとも、例外的に株式取得者が単独で請求できる場合は、会社法施行規則24条に規定されている場合となります。