不在者が所有する現金が発見された場合、財産管理人が不在者を代理してその現金を銀行の不在者名義普通預金口座に預け入れるためには、家庭裁判所の許可を得ることが必要?

民法
(管理人の権限)
第二十八条 管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

(権限の定めのない代理人の権限)
第百三条 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

 家庭裁判所に選任された不在者の「管理人」は、103条に規定する権限、すなわち①「保存行為」又は②「代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得なければその行為をすることができません(28条)。

 現金を銀行預金口座に預ける行為は、現金を債権に変えることではありますが、それによって回収可能性が著しく高まるわけではなく、預金は現金と同視することができます(遺産分割において、通常、債権は当然分割されますが、預金債権は当然分割されずに遺産分割の対象になるのと同じ趣旨です)。したがって、現金を不在者名義の預金口座に預け入れることに、家庭裁判所の許可は不要です。

 もちろん、これはあくまで不在者名義の口座に預け入れることであって、第三者の口座に預け入れることを家庭裁判所の許可なしに行うことはできません。