憲法がよく改正される国もあれば、対照的に一度も改正されたことのない国があります。例えば、アメリカでは憲法改正が何度もされた歴史があるのに対し、日本では憲法を改正しようとする試みが一時期注目を集めたことはあったものの、日本国憲法が制定されてから約70年間一度も改正されていない状況です。
では、ロシアの憲法改正事情はどのようなものとなっているのでしょうか。
ロシアで憲法改正手続が進行中
実はまさに現在、ロシアでは憲法改正に向け手続が進められている状況です。
きっかけは、2020年1月15日にプーチン大統領が憲法改正を提案したことにあります。提案と同日に作業グループが組まれ、1月20日には、下院に憲法改正法案が提出されました。
上院での憲法改正審議にあたっては作業部会が開催されており、第1回の作業部会は1月23日に無事に行われました。もっとも、改正事項が多岐にわたるためか、2月11日に予定されていた第2回の作業部会は2月下旬~3月上旬頃に延期がされることが決定されました。
具体的な改正内容
憲法改正の内容は、プーチン大統領が改正を提案した際には22個の改正事項が掲げられていましたが、その後、改正事項はさらに増えているうえ、改正内容も福祉に関するものから憲法裁判所の制度改革まで多岐にわたっています。
例えば改正内容の1つとしては、大統領候補者の要件を、25年以上ロシアに居住している者(現在は10年間の居住が必要)で、かつ、外国籍又は外国の永住権を有しないものに限定することが検討されています。
中でも、福祉に関連する改正では、労働最低賃金を最低生活水準を下回らないものとすること、年金や社会的給付等が最低生活水準を下回らないものとし、物価スライド(インデクセーション)を保証することを憲法に盛り込むことが検討されており、これらは90%もの国民の支持を集めている状況です。
今後のスケジュール
現在、国民投票は4月12日に行われると予想されていますが、作業部会の延期との関係で国民投票の日程がさらに遅くなることも十分に考えられます。
また、具体的な投票の方法もまだ方針が定まっていない状況です。プーチン大統領はすべての改正事項をまとめて一つの票で投票するよう処理しようとしていますが、国内の法律家はこれに対して異議を述べている状況です。反対の主な理由は、国民が強く支持する福祉関連の改正を利用して、福祉関連以外の改正もどさくさに紛れて行われる可能性を懸念していることが挙げられています。
参考
