現在、ロシアでまさに行われている憲法改正に新たな動きがあったので、今回はその動きについて、ロシアのラジオ番組がどのように分析しているかも加え、お話をしたいと思います。
憲法改正に向けてプーチン大統領が作業グループを結成したということは前回の記事でもお伝えしましたが、2月14日に作業グループとプーチン大統領が対談をしたと報じられています。
作業グループとプーチン大統領の会談
この憲法改正は、プーチン大統領が提案した7つの改正項目から始めましたが、その7つは不明確すぎるとして、作業部会では500個の改正を加えることが必要であるとの方向性で検討がなされているようです。このように改正が膨大となってしまったのは、主に、プーチン大統領が最初に提案した7つを修正しようとすると、憲法の他の部分にもしわ寄せがきてしまい、それらへの対応が必要となるからだと分析されています。
もっとも、この作業部会は法律家だけでなく、俳優、スポーツ選手、医者等のような様々な業界の人、計75人から構成されており、オリンピックで女子棒高跳で金メダルを取得した経験のあるイレナ・イシンバエワさんといった有名人も一定数含まれています。多角的な視点を組み込むという視点から作業グループに様々な業界の人を含めるのはよい側面もあるとは思いますが、作業グループのメンバーの中には自分はこの憲法改正をきっかけに初めて憲法を読んだと堂々と公言する人もおり、本当にこの作業グループがしっかりと現行法を分析したうえで、改正を検討できているかははっきりとしないのが現状です。
憲法を無視した改正手続
1998年に改正された歴史のあるロシア憲法の中には、既にどのような流れで憲法改正をするべきかの手続の詳細が規定されているにもかかわらず、プーチン大統領はかかる手続を無視して、作業グループを自ら結成し、独自路線で憲法を改正しているようです。
また、プーチン大統領は、憲法の改正条項を全て抱き合わせたうえで国民投票をするという姿勢も以前として維持し続けています。
専門家の見解
国民に有利となるような憲法改正の内容も果たして必要なのか、疑問を呈している専門家も現れているようです。
具体的には、年金や社会的給付等が最低生活水準を下回らないものとし、物価スライド(インデクセーション)を保証する内容の変更について、多くの国民の支持を集めている状況でしたが、実はこの内容はすでにロシア労働法に規定されており、そもそも憲法に規定する必要があるのかと分析されています。また、インデクセーションは最終的な数字が上がると国民は色眼鏡でみていますが、かけ合わせる数字によってはむしろ現状よりも悪化する可能性があることも国民は気にするべきであると分析されており、国民が自分たちにとって有利と解している改正内容は実は必ずしも有利なものとはいえないということなのです。
今後の憲法改正の動きはまだまだ目が離せない状況です。